第二章 私の小説に足りないもの

第76話 知的好奇心が面白さの鍵

知的好奇心が面白さの鍵


 皆様はさまざまな理由で小説を書いています。

 私は底辺作家ながらも書籍化を目指して書いていますが、まったく及んでいません。

 一方で、書籍化が相次ぐ書き手の方もおられます。

 小説賞・コンテストの受賞常連さんと一次選考落ちの違いはなんでしょうか。




 小説賞・コンテストの長編部門はだいたい10万字以上であることが多いですよね。

 10万字読ませるのですから、読み手も楽しめないと読み進められません。


 そんななかで読み手が小説を読む理由のひとつは「知的好奇心を満たすため」です。


 たとえば「密室殺人事件が起きた」ことをミステリー小説の書き出しで述べていたとします。

 すると読み手は「誰が犯人なんだろうか。どのように殺したのだろうか。どうやって密室を作ったんだろうか」とだいたいこのあたりが知りたくなります。

 この知りたくて仕方がない感情こそが「知的好奇心」です。


 「謎」があれば解決させなければ気持ちが悪い。だから犯人、殺害方法、密室の作り方を知りたくて、つまり「知的好奇心を満たすため」に小説は読み進められます。


 このあたりの仕組みは、テレビのクイズ番組と同様ですね。

 クイズ番組も「謎」が提示されてから「正答」が出るまで視聴者を惹きつけ続けられます。この機能を利用して「CMまたぎ」を多用したため不評を買って視聴率が激減し、かなり淘汰されましたが。


 恋愛小説の場合は、「主人公はどんな人と恋に落ちるんだろうか。告白はいつどのタイミングなのだろうか。最終的に結ばれて終わるのだろうか」というあたりが「謎」として「知的好奇心」が発生します。


 つまり、読み進めてもらうには「知的好奇心」をくすぐることと、それを少しずつ満たしていくことを同時並行させないとなりません。

 クイズ番組も一問目か終わったらすぐに二問目が始まりますよね。「知的好奇心」が満たされた途端、新たな「知的好奇心」を煽られるのです。




 軽妙洒脱で読み進めやすい文章に惹かれて先へ先へと読み進めていくのに、いつ頃からか「読み進めるのが馬鹿らしくなっ」て中途離脱(ドロップアウト)が発生してしまう。

 「小説あるある」です。


 文章がどれだけ巧みだろうが、「知的好奇心」を満たせない作品はつまらない。

 「読み進めるのが馬鹿らしくなる」と感じるのは、いつまで経っても知的好奇心が満たされないからです。

 「謎」がひとつしかなく、それが10万字のラストにならないと解答が出ない。

 そうなると、数万字読み進めても知的好奇心がいっさい満たされず、「こんなもの読んでいられるか」となって当然です。


 ミステリーなら、ミスリードでもよいので少しずつ「謎」を解決しながら新たな「謎」を提示してください。読み手の知的好奇心を満たしながら新たに駆り立てて惹きつけ続けるのです。

 これで中途離脱(ドロップアウト)をかなり防げます。




 第一話PVが多いのに第二話PVが激減するのは、第一話を試し読みして「思っていたのと違う」からです。

 第一話PVを高めたければタイトルやキャッチコピー、紹介文で多くの読み手を期待できるものにする手があります。

 ただ、これをやって第一話がつまらないと大量離脱が発生するばかりか、新作も読むのを手控えられるおそれもあります。


 だから基本的に内容に見合ったタイトルとキャッチコピー、紹介文で勝負しましょう。

 そうすれば第一話での離脱率を低減させられます。




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