第39話 匂わせ
ドラマとか映画の宣伝を見て「これはいい」って勘が働いた時、あんまり外れた事がないのが私のささやかな自慢なんだけど、このエッセイを書くようになって、あるドラマをよく思い出す。なんと、そのドラマでは勘が働いたのにも関わらず、初回のラストで「そんな偶然あるか!ボケ!」って発狂したんだよ……。
なんやかんやで5話目あたりで、初回の理不尽な偶然は「そういう事か……」って論理的にめでたく払拭されたんだけどね。
最終的には何度も繰り返し見るほどのお気に入りのドラマになって、早々と切らずによかったと思ったんだけど「危ない橋を渡ったんだな……」とも強く感じた。一話目のラストが、偶然ではないと示唆する「匂わせ」があるにはあるんだけど効果が弱すぎてね。主役級の俳優が男女二人ずつ出てた事と、「名作の匂い」が微かに漂ってたから見続けたけど、それがなかったら早々に切ってたと思う。一話目で切られちゃったら、その後のどんな見事な展開も無駄になっちゃうじゃんね。監督さんはキャスト陣の豪華さや話題性に賭けたのか、それとも「一話目で切らないでくれ」と祈ったのか。何はともあれ視聴率で数字も残して成功したわけだけど、なんとも危ない橋だよ。
これは小説でも同じだね。なにかの展開に読者が「そんなアホな……」ってなる事も、その後に種明かしが用意されてたりするわけだけど、切られてしまったらどうしようもない。それを防ぐためには読者に「うん? なんかコレが気になる……」っていうような「匂わせ」が必要になる。そのさじ加減がとても重要だけど、前述のドラマを考えると、弱すぎるよりは少し強いぐらいの方がマシなのかもしれない。絶妙が最高なのは言うまでもないけど、なかなか難しいもんね。
少しでも効果的に「匂わせ」を書くには、やっぱり作品の全体像を見渡す事が必要だね。となると、プロットのない連載は不利になる。更新のためだけに書き散らかしたものを「書いたからアップしたいんじゃああ」でアップするなら、そんな苦悩もないだろうけど、書けども書けども白目をむいて失神するようなPVが並ぶだけだしね。読者に物語を追ってもらうには、読者の気持ちを考慮しなきゃいけない。
うまく「匂わせ」を使えるようになりたいね。
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