WEB小説で驚いたこと

第30話 ファスト化

　少し前にファスト映画をYou Tubeで流して逮捕された件があったね。個人的には逮捕された事より、映画のファスト化とその需要の多さが驚きだったよ。

　なぜってそもそも映画は、何かのテーマについて、映像的にもストーリー的にも、できる限り無駄を削った「これだけは落とせないシーンの集まり」って捉えてるから。無駄がなく洗練されたものだからこそ、2時間ほど観客の心をさらって別の世界に連れていけるって。

　もちろんそれは理想であって「金返せー！　時間返せー！」って叫びたくなるような退屈な映画は今も昔も山ほどあるんだけどさ。

　ファスト化するのが、テレビドラマだとわかるのよ。今も連続ドラマのスタンダードが12回放送なのかどうかわからないけど、ファスト化して4〜5時間ぐらいにしたら視聴率も芸術性も上がるんじゃないかって。

　でも、はじめから削る要素が少ないはずの映画がファスト化されちゃうのは哀しいねえ。なんか圧縮袋でぺたんこにされたふとんみたいに思っちゃうよ。そんなふとんで寝ても気持ちよくないでしょうに。

　忙しい現代人のニーズに合わせたものなのかもしれないけど……映画すらファスト化されちゃうんじゃ、本離れはますます進むのか……なんて思いつつ、子供を含め若い世代のスマホ利用時間の統計はびっくりするほど長くて、なんだかよくわかんないや。

　でもまあ、人間は忙しすぎるのは良くないね。何かをゆっくり味わうのはもちろん、何かを深く考える事ができなくなってしまうから。それが極まってしまうと人間ではなく、動物になってしまうから。ただただ忙しく働いて日々をやり過ごしてしまうだけで手一杯の人間という名の動物に。

　まあそう仕向けられてるんだろうけどね。それに気づく人が増えるといいね。