第24話 失意こそ光

 ツイッターを見てたらね、大学の講師か何かをしてる人が昨今の大学生の文章力のひどさを嘆いてたのね。冗談抜きで、それはもうひどいんだって。でも、そのツイートの中でこうもあったのね。「本をよく読む子ほど自分の文章のひどさに絶望している」って。


 これには思わず膝を打ったよ。人の絶望を喜んでるんじゃなくてね。ものすごく大切な事が含まれてるから。何かって言えば、本を読んでない子は絶望すらできないんだよ。つまり自分の文章のひどさに気づく事すらできない。気づかないから苦悩がない、当然そこに改善が生まれるはずもない、でしょ?


 絶望って言葉はあまり好きじゃないから、失望に言い換えるね。

 自分の文章や、書き上げた作品がアレヤコレヤの原因があって読まれなくて失望しても、その原因がわかるなら大丈夫って事を言いたいのね。大丈夫というかむしろ光だよって。

 ちゃんと文章や小説に対する審美眼が自分に備わってて、冷静に自己評価してるって事だから。


 前回のボコボコにKOされて「アマチュアですし、趣味ですし、自己満足ですし」って言ってた選手だと、自分の現状に問題すら感じる事ができないでしょ? だから当然何一つ対策もしない。改善されるはずもない。そのまんま次の試合を迎えるわけだけど「今度は仕上がりがいいので応援おねがいします」って周囲に宣伝だけは熱心。

 

 で、当たり前だけど、またフルボッコ……。

 でも、また本人はヘラヘラとお得意の決り文句を口にして楽しそうに笑ってる。後で自分の試合のビデオを見返して、観客がぞろぞろと席を立って出口に向かってるのにも気づかずに本人だけは「いい試合ですし、早くまた試合したいですし、お客さんたくさん来てほしいですし」ってつぶやいてたら、怖いでしょ……?

 

 ここを読んでくれる人は、そんなパンチドランカーのような選手には絶対になってほしくないのね。

 今はなかなか試合に勝てなくて失望ばかりでも、いつか、いい試合をして、勝って、セコンドが褒めてくれて、観客も喜んでくれた、でも「まだまだスタミナが足りない。ディフェンスも甘い、パンチのコンビネーションも少ない」。そんな風に、もっと強いボクサーになるために冷静に自分を分析するような選手になってね。


 小説でね。


 





 

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