第22話 世界の立ち上げ
「小説は最初の一文に全てが集約される」的な事を、いろんな作家さんが言ってたりするね。それは作家さんによって様々なんだろうけども、大事なのは間違いない。
だって読者はそこから物語に入ってくんだから。そこから世界が始まってくんだから。なかなか読んでもらえないWEB小説では、特に大事かもしれないね。
前回、川上未映子さんのツイートでの物語の巧みさを書いたんだけども、それを書きながらずっと思い出してたのが川端康成。日本を代表する文豪だね。「トンネルを抜けるとそこは雪国だった」は笑ってしまうぐらいに鮮やかなんだけども、川端康成には掌編小説ばかりを集めた「掌の小説」って本があるのね。
これがもうすごい。ざっと100編ぐらいあるのかな。ほんとに2,3ページの掌編で、長いのでも10ページぐらいなんだけども。
何がすごいって冒頭での世界の立ち上げ方。心情だったり状況だったり、会話だったり、風景だったり、色々なんだけども神の如く融通無碍に鮮やかに世界を立ち上げる。
そこからすーっと読者の心をさらい、そしてすーっと茫洋と消えていくように終わらせる。今さらなんだけども、この人は天才なんだろね。
あんまり純文学とかが好きじゃない人もね、小説を書く人はこの本を手元に置いたらいいと思う。冒頭だけじゃなくて、構文やら語彙やら参考になる事が山ほどあると思う。なんせ掌編だから、ほんのちょこっと空いた時間に読めちゃうしね。
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