第20話 身の丈に合った構想
常々思うんだけど、小説と建物って似てるね。作家と建築士って似てるのかもしれない。想像力の限りを尽くして、すごい長編、すごい豪邸に、いつか取り組んでみたいってね。
でも、それはそれぞれとても難しくて、大切になるのは、きっとその都度それぞれ身の丈にあった小説や建物に真摯に丁寧に取り組む事なんだろうと思う。
たとえば豪邸は、大きな分だけたくさんの太い柱が必要で、部屋数も多くなる。
そしてデザイン性、耐震性、耐久性、階段や水回りの利便性、全体の採光、住む人の心地よさ、建築士としてのこだわり、複雑に絡み合う幾つもの要素を考え抜かないといけない。ものすごく大変……。
そんなものにまだ経験や技術が伴わない建築士が取り組んだ時、悲惨な事になるのは目に見えてると思うんだけど、どうだろう。
外観が立派そうでも、一歩足を踏み入れたら中はチグハグ、あらゆるバランスが悪くて快適に暮らせるイメージが湧いてこない。そんな豪邸なら売りに出しても、せっかく見学に来てくれた人もすぐ帰っちゃう。建築士本人だけがご満悦で「いい感じに仕上がりました。私の好きな感じや趣味を詰め込んでおります」とか言われても「いや、住むのは私たちなんですけどね……」としか言いようがない。
逆に、こじんまりとした平屋の小さな家でも、一歩中に入ったら、思わず「素敵」って言葉がこぼれるような家ってある。出来うる限りの最善が尽くされて、建築士が住む人の心地よさを隅から隅まで考えてくれてるのが伝わってくるような設計。
住む人の気持ちに思いを巡らせないで、建築士の好みや都合だけで設計された家が、住む人にとって心地よいものになるはずはない。建築士だけが気持ちよくなってても、お話にならない。
これって、小説にそのまま当てはまるでしょ? 身の丈に合った構想、大切にしたいね。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます