第一章 宮廷で真贋鑑定をする
1-1
王宮は街中を
ジゼルは衛兵たちのなにか言いたそうな視線をかわすようにして、ささっと中に入った。
追いかけてくるように「
期待していたほど身長も
しばらくはなにごともなくすんだが、今度はジゼルの招待状を受け取ったお
「―― ジェラルド・リューグナーって、あの天才画家の!?」
案内係の
(わわわっ、みんな話しかけてきちゃった、どうしよう……!)
「どうかしたのか――?」
よく通る印象的な声が耳に届いた。
声をかけてきたのは、絵から
「……彼の招待状を見せてくれ」
青年は、ラピスラズリを
青年の着ている服は上等なもののようで、
「へえ。あんたが女王の
青年が背筋を伸ばすと、見上げてしまうほど背が高い。
ジゼルが押し黙っていると、彼は
「ひとまず中に入ってくれ」
「あっ……ローガン様、困ります。私の
ローガンと呼ばれた青年は、
(――助かった! 目立つのは困るから)
ホッとしながら後ろを振り返ると、
「……あの、ありがとうございました」
「顔に思いっきり『
ジゼルが改めて礼を言うと、ローガンはくるりと向き直り、両手を
「なんの騒ぎかと思ったが、噂の天才少年画家のご来場だったとは」
「あははは……」
「
「……なっ! 子どもっぽいかもしれないけど、今それは関係ないですよね!?」
気にしていることをグサリと言われてジゼルが思いっきり
「ジェラルドは十六って聞いていたけど、十二の間違いじゃないよな?」
「――……
「俺の二つ下か。しかもまだ声変わりもしていないとはな」
「助けてくれたのには礼を言いますが、容姿については大きなお世話ですっ!」
「へーえ……俺に言い返すのか。
ローガンが
「なにかありましたか?」
反論しようとしたところであまりにも近くから急に声をかけられて、ジゼルは驚きに肩を
ジゼルの真横から現れたのは、ローガンほどではないが、背が高く品の良い人物だ。ゆったりとした
知性の
「これは
「宰相……!? っていうか、小さい男の子ってさっきからほんと失礼だな!!」
「騒ぎだというから来てみたら……ローガンでしたか」
まだ若い宰相はジゼルを見つめると、
ローガンに
「あなたが、噂のジェラルド殿ですね。お会いできて光栄です」
一国の宰相に面と向かって話しかけられて、ジゼルはさらに
「
「とんでもないです……たしかに態度と口調はあれでしたけど、助かりました」
「おいチビ
「ローガン」
カヴァネルは困った顔でローガンを
「せっかくですから、ジェラルド殿を会場へ。奥の広間にご案内してください」
ジゼルはぎょっとして断ろうとしたのだが、カヴァネルに
「話題の芸術家のご来場とあらば、
「いえ、そんな……そこまでしていただかなくても大丈夫です!」
「
ジゼルはまたもや腕を引っ張られて、あっという間に奥の広間に連れていかれた。
(ローガンてなんだか目立つから、
案内してくれるのは
しかし、
その点には
「あれが今夜お披露目されるファミルーの絵画だ」
作品への期待につい目が
「あの方は……」
「シェーン王国シャリゼ女王
異様に高い背もたれの
「後ろにあるどでかい
金髪に濃い青色の瞳をした大きな肖像画が、女王の後ろから場を見下ろしている。
「ところでチビ助。女王に『肖像画の注文をずっと断っていてすいません』って謝りに行かなくていいのか?」
さらりと痛いところを突かれて、ジゼルは
「依頼を引き受けるつもりはないから……挨拶するだけ
ローガンの意地悪な質問にジゼルは心苦しくなる。そんな気持ちを
ほどなくして司会の男が気取った様子で絵画の横に姿を現した。広間が割れんばかりの
「
「げ……ボラボラって、まさかあのボラボラ商会のことか!?」
ついでに、
そんな悪名高い商会が、なぜ王宮に絵画を寄贈する立場にあるのか。ジゼルにはまったくもって理解しがたい。
「では、さっそく――作品のお披露目といきましょう!」
筆頭がもったいぶった
ようやくお目見えした巨匠の絵画に、近くで
「くっ……観たいのに観えない……!」
ジゼルは絵画に
「俺の肩を貸してやる。
「うっ、うるさいな!」
横からくつくつと笑われて、ジゼルはムッと言い返した。
「お前、せっかく来たのになんで絵の前まで行かないんだ?」
「……いい。ここで
本音としてはかぶりついて観たいところだが、人が密集する場で万が一にも他人に
遠くから指を
(筆頭は宝石商上がりだから、絵画の知識には
「この流れるようなタッチですが、ファミルー独特の手法を使っておりまして……」
筆頭の説明を半眼で聞いていたローガンは、ジゼルの
「なあチビ助……あれが
「……面白いどころか、大変なことになるだろ? それからチビ助じゃない!」
「ボラボラのやつ、王宮で
それに、
「……お前、天才と噂されるくらいだから絵画を見る目もあるよな? 作品が本物かどうか
「はあっ!?」
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