天才宮廷画家の憂鬱 ドSな従者に『男装』がバレて脅されています
神原 オホカミ/ビーズログ文庫
序章
天才少年画家〈ジェラルド・リューグナー〉は、シェーン王国の王都で評判の今をときめく
『とても絵とは思えない! 彼は景色を丸ごと切り取って持ってきてくれたのだ!』
『本物と
『ジェラルドに絵を
――だが、そんな天才画家には、
画材の買い出しから
目がくらむように
使者と思われるひ弱そうな男が、顔に困った
「ジェラルド様。そろそろ王宮にお
「……ええっと。
あいまいに返事をすると、顔面に特別
圧力を
封書を受け取って家の中に
「む、む、無理だからっ……!」
これまで
〈ジェラルド〉は人物画も肖像画も依頼を
――なぜなら、
「行けないよ。だって、〈ジェラルド〉が女だって知られたら、絶対にまずいじゃん!」
ジゼルが住むシェーン王国は、周辺諸国からも名高い芸術の国である。王国の歴史を築き上げてきた芸術家たちは、その時代背景からほとんどが男性だ。
それもあって、
女性も
――しかしジゼルは、『画家として
そのため、性別を
つまりジゼルは、
けれど、画業以外に自分がやりたいと思うことも、また実際できる仕事もないため、後悔はない。
それでも
ところがその秘密主義が逆に
なおかつジゼルの最近一番の
四年ごとに
招待国の要人の来訪に合わせて、演劇や
もちろん絵画作品も例外ではない。王国の歴史を彩ってきた絵画は特に重要とされており、行事のかなめの一つだ。
人気と技法において今や右に出る者がいない天才画家〈ジェラルド〉に、目玉となる女王の肖像画制作の
「肖像画を引き受けたことがない私を選ぶのはちょっとなぁ……ほかにもいっぱい人物画が得意な
ジェラルドの名を
しかし、人物画はモデルと対面する必要がある。小さい時には描いていたので、今も描けないことはないと思うのだが、長時間他人と
そのようなわけで、女王からの依頼も必然的に断っている。
「たしかに、女王陛下からご指名いただけるなんて、画家としては願ってもない
いつもと違う色の
書かれた文字を読んだ
「ジャン・ミゾーニレ・ファミルー未発表作品のお披露目会!? 招待客限定!? 絶対行きたい!」
ジャン・ミゾーニレ・ファミルーとは、およそ五百年も前に
内容を
「げっ! お披露目会は……今夜!?」
行きたい気持ちと、性別偽称が
「うーん……バレてお
おまけに招待客限定となれば、
「行こう! でも、正体がバレないように気をつけなくちゃ」
王宮の送迎馬車がまだ階下に
手持ちの中で特に
男装するため短く切ってしまった
悪目立ちするそれをベレー
鏡の前で最終確認をすると、ジゼルは小走りで玄関を飛び出した。
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