第25話
キュウェラに到着してからは何の問題もなく予定は進んだ。
ロアルがメイケーラの石を加工してユーリヤに装着、爆発物処理班が彼女から爆弾を取り除いた。
爆弾はヴィオラへ慎重に運ばれ、位置情報システムと一緒に誰も住んでいない荒野で爆破。前もって準備していた
爆発物の欠片を理由にサトーラ軍へ監査に入り、管理局は大量のアンドロイド体を発見、中身はまだ入っていないので処分となった。
サトーラ軍はアンドロイドを造ったとして現在、星間裁判にかけられているところである。
さて、ユーリヤの対応についてだ。
「メイラで暮らす許可がおりた⁈」
ソーライは驚いて喜びの声を上げた。
シュラーは届いた書類に目を通しながら言う。
「彼女の存在のお陰でサトーラの悪事を未然に防いだ。また、噴火口でソーライを助けたことも大きい。今回の功績から、俺の監視化で生活をすることが認められた」
「やったー! よかったな、ユーリヤ!」
両腕を上げて喜ぶソーライの横で、ユーリヤが真顔のまま首をかしげる。
「私は研究所送りではないの?」
「それについてだが、ナノテクノロジーについては報告していない。帰路に二週間かけただろう」
「それとどう関係があるんだ?」
ソーライの質問に、シュラーはしかつめらしい顔で
「爆速航行で時短して片道一週間で行ったと言い張った」
「言い張った⁈」
「俺たちがブラックホールを通過した事実はなくなり、お
「そんなのでいいのかよ……」
ガバガバな監査委員会の見解に耳を疑わずにはいられないが、
「さて、ユーリヤ」
シュラーはユーリヤに向き直ると、一枚のカードを手渡した。この星の居住許可証だ。ソーライも昔こうやって手渡されたことがある。
「俺の監視化で生活するようにと書類にはあるが、メイラの中なら自由に動いて構わない」
「自由……?」
「ああ。人間らしい生活を自由に楽しんで欲しい」
シュラーらしい台詞に、ソーライはこっそり微笑む。
そうだ。彼はこういう奴なのだ。
口では処分と言いながら、きっと彼女を助けてくれると思っていた。
するとユーリヤは口を開いた。
「私も貴方の助手をしたいわ」
「それは、ソーライとその席を取り合うということか?」
「そうよ」
淡々と述べるユーリヤに、ソーライはガタンと椅子を倒して立ち上がる。
「ちょっと待てよ!」
「ソーライになら勝てる自信があるわ。彼よりもきっと私の方が便利よ」
「俺だって便利だ! シュラーのご飯だって作れるし!」
「私も三つ星レストランのレシピなら全部入っているわ」
二人が言い争いを始めるので、シュラーは盛大なため息をつく。
「……じゃあ二人とも、今日中に今回の出張の報告書をまとめるように」
付き合っていられないと言わんばかりに肩をすくめながら部屋から出て行く。
「こうなったらユーリヤより一枚でも多く報告書を書いてやる」
「あら、短くまとめる方がいいに決まってるわ。そもそも紙に書くなんてナンセンス、パソコンで作る方がスマートでしょ」
「アナログの方が心がこもってる!」
かくして二人は報告書作成の業務に一日を費やすこととなった。
星間輸送管理局の今回の出張業務はこれにて終了。押収物はAI未実装のアンドロイド体五百体、及び完成体が一体。
ソーライは書き終えると、日誌の分厚い冊子をそっととじたのだった。
星間輸送管理局の業務日誌 四葉みつ @mitsu_32
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