第24話

 ソーライは黙りこんだ。

 かと思えば、絞り出すように口を開く。

「ふざ……けんな!」

 ソーライはユーリヤが止めていた岩塊を勢いよく殴った。重力操作されていた岩はふわりと飛んでいく。

 岩の高熱でグローブが溶け始めたが、そんなのはお構いなしだ。

 ユーリヤは止めるものがなくなって立ち尽くした。

「犠牲が出ることが最善なはずあるか! ユーリヤも一緒に合流する、行くぞ!」

 ソーライはユーリヤの腕を強引に掴むとランデブーポイントに向かって走り出す。

 するとそこにまた噴石が降ってきた。

 一メートル近い岩に行く手をさえぎられる。マグマを含んで赤く燃える岩に触れることも出来ない。

「くそっ」

 ソーライは苦虫をかみつぶしたように毒づいた。慌てて背後も確認したが先ほどロープで降りた場所に戻るのも難しい。

 真上に足場となるような岩がないか見上げたそのときだった。

<ソーライ、小型シャトルを近づける! 車輪を出すから掴め!>

 シュラーが端末ごしに叫んだ。

「でも風圧が!」

<ユーリヤに重力操作を頼むんだ!>

 ソーライが彼女の方を向くと、ユーリヤは無言でうなずく。

<十秒後に接近、九……八……七……>

 シュラーのカウントダウンにソーライは身構えた。地鳴りに混じって小型シャトルの爆音が聞こえてくる。見上げると、一人乗りの探索機が噴石の間を縫って近寄ってくるのが確認できた。

 瞬間で通過していく車輪の軸を上手く掴めるだろうか。衝撃はいかほどか。

 するとユーリヤが口を開いた。

「私が車輪を掴むわ」

「へっ⁈」

 そう聞こえた途端、ソーライはひょいと抱え上げられていた。

 瞬きをしている間にシャトルが接近し、気がつけば噴火口の上空に舞い上がっていた。


「だから俺は認めていないと言っただろう!」

 シュラーの厳しい口調にソーライはしゅんとうなだれた。

 無事に回収されたソーライとユーリヤはシュラーの前で並んで正座させられて、仲良くお説教タイムだ。

「さすがに生きた心地がしなかったぞ……」

「ごめんなさい……」

 ソーライとユーリヤは声を揃えて謝罪する。

 ちゃんと反省している様子を見て、シュラーはしかつめらしい顔で言う。

「とりあえず、今回は二人とも無事に戻ってきたから良かったものの……次はこんな危険な真似はさせないからな」

「次……も一緒に行動していいの?」

 ソーライがおそるおそる尋ねるので、シュラーは盛大なため息をついた。

「お前は俺の何だ」

「……イヌ?」

「相棒だろうが!」

 ソーライの脳天に鉄槌がくだって反省会は終わった。ユーリヤの通信を妨害する石もあるので、帰路は安全な航路で二週間かけて帰ることとなる。

 ソーライは危険な行動をおこなった罰として、二週間の艦内清掃を申し渡されたのだった。

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