第23話

 先ほどから地面が音を立てていることには気づいていた。

 シュラーが上空から異変を感じるほどだ。噴火が近いのかもしれない。

<ソーライ、石は好事家こうずかから入手する。お前はすぐに戻れ>

 繋がったままの端末からシュラーの声がする。

「すぐ目の前なんだ。帰りのルート上だし、一カ所確認したら戻るから」

<……分かった。だが念のため今の座標を送れ>

 シュラーに言われて、ソーライは端末から現在地を送信する。それからすぐに周囲を確認し始めた。

 先ほどの場所とは違って大きめの岩が多い。岩塊がんかいが飛んできやすい場所なのかもしれない。

 岩の間を漁っていると、突然、背後で大きな音が上がった。

 ソーライが慌てて振り返ると、下方のマグマが火柱のように勢いよく煮え立ち上がっている。表面も少し近づいてきているようだ。

「噴火⁈ うわっ」

 思わず声を上げたところに上空から噴石が降ってきて、ソーライは慌てて岩陰に隠れた。

<ソーライ⁈ 無事か⁈>

「ああ、大丈だいじょう……あ……った! メイケーラの石!」

 目の前の岩の隙間から、赤く透き通る石が見えている。小さい噴石がいくつも重なっているが、持ち上げてどかせれば簡単に取れるだろう。

 考えている時間はない。ソーライは目の前の岩を持ち上げた。岩陰の向こう側に放り投げる。またひとつ、またひとつと無心に岩を掴む。

 熱い。

 足元から一千度近いマグマがせり上がってきているのだ。外気温は優に五十度を超えている。防護服に耐熱効果があっても、このままでは蒸されてしまいそうだ。

「ハハ、俺じゃなきゃ死んじゃうね」

<退避しろ、ソーライ!>

「取れ……た! すぐ戻る!」

 直径十五センチほどの赤い石を引っ張り上げると、ソーライは岩陰から飛び出した。

「!」

 そこに大きな石が降ってきて、慌ててソーライは空いている腕で防御の姿勢を取る。次にくる衝撃に備えて身構えた。

 しかし身体に衝撃はこない。

 ソーライはじわりと薄目を開けると、すぐさま目を見開いた。

「ユーリヤ⁈ 何降りてきてんだよ!」

 上で待っているはずのユーリヤが目の前に立ちはだかって、飛んできた岩塊を止めている。火の粉でフリルの端がチリチリと燃えている。

「持ちこたえている今のうちにシュラーと合流して」

 この先に登りやすい岩場がある、とユーリヤは視線で誘導する。

 しかしソーライはかぶりを振って声を荒らげた。

「お前がいないと石だって無意味だろ! それに守るべき叡智えいちだって!」

「それは貴方たちに託せるわ」

 ユーリヤは微かに笑った。

「貴方たちに託して問題ないと判断した。それに私の存在、知識は争いの火種になる。ここで事故に巻き込まれて消えるのが最善よ」

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