第22話

 ユーリヤは火口側とは逆の、金属ようの大地に目をやった。そこにはメイケーラ特有の金属で構成された、青に近い色をした地盤が果てまで広がっている。

「この金属……登録がないわね」

「メイケーラは最近登録された惑星だしな。ユーリヤのメモリにはまだ入ってないのかもな」

「そう。では仮にMKRと命名して検索を続行、先ほどのマグマ要素の検索結果と重ねて——」

「本当に万能だな。俺の出る幕ないじゃん」

 そうやってソーライが苦笑いをこぼしているうちに、ユーリヤの探索結果が出た。

「推測される位置がいくつか出たわ。ここから二百メートル下の岩場が一番近い場所、次は前方三百メートル、そこから下に二百」

「じゃあ真下から調べよう」

 ソーライは崖下をのぞき込む。岩を伝ってうまく歩いて降りられれば、と思ったが望み通りにはいかないようだ。二百メートル下までは岸壁がほぼ垂直にそびえ立っている。

「ユーリヤは宙に浮いたりできる?」

「ある程度の跳躍力はあるけれど、浮遊状態を維持する機能はないわ」

「じゃあロープで垂直下降したら登るのが大変になるか。服もヒラヒラしてるしな……」

 ソーライは持ってきた道具箱から金具を取り出すと岩場に打ち付けた。そこにロープを通すと続いて防護服の金具へと通す。

「俺がちょっと行って見てくるよ。ユーリヤはここで待ってて」

 ソーライはそう言うとロープを使って器用に絶壁を降下する。少し降りただけでも足元から熱気が上がってきて、ソーライは顔をしかめた。ここから更に外気温は上がっていくのだろう。

 途中で何度か岩に金具を打ちながら下まで降りるとソーライは周囲をぐるりと見回した。ユーリヤによればこの辺りに目的の石の反応があるという。

「でも構成物質で探索しただけだから、溶岩と金属が別々に存在している可能性もあるよな……」

 ソーライの独り言の通り、ほどなくすると金属と溶岩が別々に見つかった。

「そう簡単に見つかるわけないか……」

 ソーライは上空を見上げるとユーリヤがこちらを覗いてきていたので、両腕でバツ印を作る。それから「次へ行く」と前方を指さして伝えた。

 平行移動ならロープなしでもいけそうだ。ごつごつした岩場に手を掛ける。

 ふと胸元の端末がピピッと音を立てた。シュラーからの着信だ。

<ソーライ、マグマの動きが変だ。一度退避した方がいいかもしれない>

「あと百五十メートルくらいで目標まで行けそうなんだ。そこを確認したらランデブーポイントに向かうよ」

 ソーライは眼下のマグマを一瞥すると、すぐに目的地を見据えて岩肌に手を伸ばした。

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