第20話

 ユーリヤの検索結果のとおり、そこには噴火口があった。しかも幸い、今は活動が比較的緩やかなようだ。

 シャトルは火口上空でホバリングを続けている。

「では降下を始めるわ。私が無事に着地したらシャトルは一旦ここを離れて。無事に石を発見したら回収をお願いするわ」

 ユーリヤが早速外に出ようとするのでソーライは慌てて引きとめた。

「だから待てって! 俺も一緒に行くって言ってるじゃん」

「生身のヒトは足手まといよ。貴方がいても無意味だわ」

「意味ならある。俺はシャトルとの通信機を持っているから回収を依頼できる。ユーリヤは電波を妨害されているならシャトルとも連絡とれないかもしれないだろ。それに俺は極端な外気温でも体温調節がきく」

「……承認するわ」

 ソーライのかたくなな口調に、ユーリヤはうなずいた。

 するとシュラーが口を挟む。

「二人とも待て。俺が認めていないだろう」

「でもこの先いつ噴火が起こるかわからないし、活動が穏やかな今が絶好のチャンスなんだ」

「しかし二人だけ行かせるわけには」

「シュラーはシャトルに残ってもらわないと困るんだよ。俺たちの大事な命綱なんだから」

 そう言われてしまうとシュラーも言葉を返せない。

 その表情を肯定だと受け取って、ソーライは手早く防護服を身にまとった。気温に対して調節はきくが、大気中のガスが必ずしも無害とは限らない。

「……ソーライ、通信機を貸せ。再度確認をしておく」

 シュラーは観念したように手を差し出した。ほかに案も考えたが、今はこれが一番最善策のようだ。

 ならば彼らが少しでも危険にさらされることのないように、シュラーでできる限りのことをすべきだ。ソーライの端末をシャトルの操作パネルと接続すると、周辺マップのデータを端末へとコピーする。

 手元だけ動かしながらシュラーは苦笑いをこぼした。

「そういえばお前は言い出したら聞かないんだったな。まったくよく似たものだ」

「……何と比べてんの?」

「むかし俺が飼っていた犬だ」

「俺、猫派なんだけど」

 ソーライが肩をすくめたところで、シュラーが端末をぽんと手渡してくる。

「現状のマップを解析してランデブーポイントの座標をいくつか端末に登録しておいた。端末はひとつしかないからユーリヤと情報を共有してほしい。石が回収できたら最寄りの地点に向かってくれ、俺もそこで合流する」

「分かった、サンキュー」

 ソーライたちは端末を受け取ると操縦席のあるフライトデッキを後にして、出入口のあるミッドデッキへと向かう。

 パラシュートと酸素ボンベを背中に背負うと、ソーライとユーリヤは二重になったハッチを開けた。

 途端に冷たすぎる空気が流れ込んできて、ソーライは思わず身震いした。しかし問題ない、まだ体温を合わせられる範疇はんちゅうだ。

 ユーリヤと視線で会話をすると、二人は火口めがけて飛び降りた。

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