第17話
ユーリヤの案内で到着したのはとある古い施設だった。
そこでとある処置を
圧縮か分解かと身構えていたが、身体が重く少し不調なことを除けば特に何も変わらない。
「ちょっと吐き気がするけど、
ぐったりしながらソーライが口を開く。
すべてを吸い込み無へと収束していく真っ暗な空間で、三人を乗せたシャトルだけが何かに向かって進んでいく。目的地の座標はメイケーラに設定しているが、自動操縦が無事にここを抜け出してくれるのかは運任せだ。
「それにしてもユーリヤが注射器を持って『打つのか死ぬのか』と迫ってきたときは驚いたよな」
ソーライは肩をすくめながらシュラーに話しかける。
操縦席から後部座席に移動してきていたシュラーは、手元のコーヒーをすすりながら
「彼女の目的がナノテクノロジーという
「いいからこのナノマシンを注入しなさい、ってほとんど脅しだったよなあ」
施設での出来事を思い起こしながらソーライは天上を仰ぎ見る。それから注入されたそれを透かし見るかのように手をかざした。
「ちっさい機械が血液の中に入ってるんだよな。ナノマシンの技術研究ってどうなってるんだっけ」
「どの星も数百年前から着手している。医療的な分野での発展が多いが、昨日入れられたこれは初耳だったな。周囲の重力と共鳴して調整をおこなう機能か、ブラックホールに突入するなら確かに必須だ」
「ユーリヤが原理を説明してくれたけどよく分からなかったなあ」
そのユーリヤはといえば、ホールに入る前からスリープ状態だ。出発前にシャトルの外装にも処置を施すと言って力を放出していたのでエネルギー切れを起こしたらしい。充電が完了したら勝手に起動すると言っていたので寝かせているところだ。
「これでヴィオラにタイミング良く雨が降ったのも理解できた」
「ユーリヤの力だったってこと?」
「ああ。おそらく気圧を操作して大気の状態を不安定にしたのだろう」
シャトルの外装に施したように、彼女が力を放出すれば可能だろう。そこまで行ってから、シュラーが神妙な顔つきになる。
「しかし問題が出てきたな」
「問題?」
「アンドロイドの処分についてだ」
その言葉にソーライの顔つきも厳しくなる。
「シュラー、やっぱりユーリヤは……」
「規律に
「でも彼女は生きたいって言ってるんだ。それに彼女の頭脳は……」
「ああ。彼女の中には人格がある。例えそれがデジタル化されたものであっても、基盤が実在した人物なら簡単に処分というわけにはいかなくなる。彼女が眠っているうちに、どうすべきか方針を定めておきたいな」
シュラーは考え込むように目を伏せた。
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