第15話
ロアルは一週間で行って帰ってこいと無理難題を言ってきた。
「メイケーラってサトーラの隣りだろ? サトーラにだって二週間かかるのに」
ソーライがぼやく。するとシュラーがため息をついた。
「行く方法はある。ただ、ロアルの悪い
「どういうこと?」
「この銀河の中心に何があるか、ソーライは知っているか?」
「ブラックホールだろ。……まさか⁈」
ソーライの言葉にシュラーは無言でこくりと
「奴はそこに飛び込めと言っている」
「そんな無茶苦茶な。そもそもホールに出口はあるのか?」
「無人探索機の試験では、一日後に惑星ウリタラ周辺で探索機が確認された。有人テストはまだだ」
「……」
探索機は無機物だがヒトは有機物、その弊害は未知数だ。
ソーライは絶句した。確かにいつ死んでもいいとは思っている。しかしシュラーがいるなら話は別だ。恩人の彼を危険な目に遭わせるわけにはいかない。
別の方法がないか考えていると、ふいに聞き知った声が耳に入ってきた。
「私が行くわ」
振り返ると白金の長い髪がふわりと揺れるのが見えた。ソーライは驚いて目を見開く。
「ユーリヤ、起きたのか!」
「あの学者に起こされたの」
彼女はそう言いながらゆっくりと足取りを確認するように近づいてきた。標準値より少し弱いこの星の引力にまだ慣れていないようだ。
「貴方たちと一緒に行けと言われたわ」
ユーリヤは淡々と告げた。ソーライは再び声をあげる。
「メイケーラに?」
「ええ」
「その……大丈夫なのか?」
「こんなところまで連れてきておいて今更ね。そう簡単に起爆しないわよ」
ユーリヤの言葉にシュラーもうなずいた。
「メイケーラには当然該当の石がある。むしろ一緒に行くことで完全にサトーラとの通信を妨害するのが狙いだろうな」
「連れて行く方が安全なのか」
「そうだ」
シュラーは納得しているようだが、ソーライは彼とユーリヤの顔を交互に見比べた。
「だけど……」
ブラックホールを通過する作戦なのだ。彼女への影響もまったく予想がつかない。
「だから私が単身で行くと言っているの」
ユーリヤは強い口調で言った。
「私は私の目的のために起爆を阻止したい。だから方法があるなら試さない選択肢はないわ。それに私は無機物、ホールを抜けたところで身体への影響もない」
「でも身体機能への影響はないかもしれないけど、体内に爆弾を抱えてるんだぞ。それこそホール内で爆発したら……」
「それは貴方たちにとっては願ったり叶ったりではなくて? 失敗したところで単なる爆破処理になるだけよ」
ソーライの心配をよそに、ユーリヤは他人事のように言う。
少しの沈黙のあとシュラーは首を横に振った。
「使用するシャトルの管理責任がある。俺も同行する」
「……分かったわ。それなら出発前に立ち寄りたいところがあるのだけれど、いいかしら?」
ユーリヤは二人の顔を交互に見た。
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