第14話

 ユーリヤはコンテナから出されないまま研究所に運ばれた。

 女の子にこの仕打ちはいかがなものかとソーライは訴えたが、シュラーもロアルも「爆発物だから」と一蹴した。事実であるので何の反論もできない。

 分厚い金属で囲まれた無機質な部屋に彼女は運ばれた。ここならば誤爆しても被害は最小限に食い止められる。

 その部屋をソーライたちはモニター越しに観察していた。

「ふむ。システムの構造はサトーラでよく見る一般的なものだね。これなら暗号化されている部分もすぐに解析できそうだよ」

 ロアルはディスプレイに表示された文字の羅列を眺めながらうなずく。

「AI中心部の構造も覗いてみたいけど今は爆弾の処理が先だね。ソーライ君、彼女は電波を受信して誘爆すると言ったんだよね?」

「正確には、電波を受信して装置が作動し化学反応を起こして爆発を引き起こすと言っていた」

「なるほど。でもちょっと違うかもね」

「どういうこと?」

 ソーライの質問に、ロアルは目の前の操作盤を触り始めた。とある文字列を見つけるとディスプレイに大きく表示する。

「ここを見てもらうと分かるけど、双方向通信で起爆するみたいだよ」

 見ても分からないがソーライは画面に目を移す。

「双方向通信……」

「サトーラから送られた通信にキーとなるものを返すことで成立するんだ」

 ロアルの台詞に、ソーライはあの秘密の言葉を連想する。サトーラの人間はそういうものを好むのかもしれない。

「で。今ざっと解析してみたんだけど」

 閑話休題と言わんばかりにロアルはぽんと手を打った。それからソーライに質問を投げかける。

「メイケーラの石、って知ってる?」

「メイケーラって数年前に輸送管理局に新規登録された惑星だろ? そこにある石ってことか」

「そうそう。その石があれば、アンドロイドから出ている電波を相殺できそうだよ。もちろん取ってきてくれるよね」

 ロアルはにこやかに提案した。

 するとシュラーが途端に眉をひそめる。

「待て。惑星メイケーラはほぼガスで構成されている。管理局に新規登録された理由は、耐ガス金属で地盤を作ってコロニーとして稼働し始めたからだ。そんな星に『石』が存在するのか?」

「シュラー、局長代理とあろうものが勉強不足だよ。ガス惑星にもコアがあるでしょ? そこの石だよ」

「簡単に言ってくれるが……」

 シュラーはそう言いながら胸ポケットから端末を取り出す。その機械は管理局のデータバンクと繋がっていて、様々な情報を調べることができる。

「メイケーラの中心核は確かに岩で構成されているようだが、そこに到達するまでに金属の層がある。まさかこれを掘削しろと言うのか」

「もしくはまれに地面から飛び出す噴石を購入するのもアリだね。好事家こうずかたちの間でたまに取引されているよ」

 試しに検索をかけてみたらソーライが一生かけても稼げないような金額が表示された。

「当然確保できるよね。だって君は天才なんだから」

 ロアルの少々皮肉めいた口調に、シュラーはムッとしながらにらみ返した。

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