第6話
積荷はロゼオ区の一角に到着した。
勝手に大豪邸を想像していたが、行き着いた先は大きな施設だった。金持ちの街なのにきらびやかな街並みに似つかわしくない、真四角で無機質な建物だ。
赤ラベルの荷物なのだからサトーラ関連企業かと思えば、門には『プターラ星立研究所』と書かれている。
(プターラ……惑星の名前だよな)
貨車の運転手が門で手続きをしている隙に、ソーライは積荷の上からするりと抜け出した。荷物と一緒に中に忍び込むことも考えていたが、場所が研究所ならば話は別だ。
少し離れた建物の陰に潜むと、ソーライはシュラーに連絡を取る。
<プターラ星立研究所?>
通信機の向こうから、シュラーの
「ああ。内部構造が分からないから、一旦積荷から降りて様子を見るよ。入ったはいいけど出られなくなっても困るし」
<賢明な判断だ。運び込まれた場所からしてアレはただの人形ではないだろう>
「人か、アンドロイドか……」
<前者の可能性はほぼないが、どちらも貨物として運ぶのは違法だ>
「でも赤ラベルなら前者も可能だろ」
<そうだな>
赤ラベル、つまりサトーラの人間なら極端に低い温度の中でも生存が可能な場合がある。違法な機械なら壊して終わりで話が早いが、人だった場合はそうはいかない。この研究所に運び込まれた理由も気になる。
<ソーライ、一度こちらに戻ってくるか?>
通信機の向こうからシュラーが問いかけてきた。
ソーライは「いや」と短く断る。
「俺はもう少し残って様子を見てみるよ」
<分かった。俺は夕方には仕事が終わる、その後そちらに合流しよう。研究所についても調べておく>
「助かる」
<それから荷物の送り主だが、やはり住所は架空のものだった>
「はは、ますます怪しいな」
研究所の入口に目をやれば、ちょうど貨車が手続きを終えて中に入っていくところだった。
それをシュラーに報告するとソーライは通話を終了する。彼と合流する前に少しでも情報を集めておきたい。
ソーライは近くのニューススタンドで適当に新聞を買うと、それを雑に広げながら門扉横の守衛の詰め所をうかがった。先ほど手続きを対応していた門番がどこかに連絡している。
(……ロボット……通過しました……か)
唇の動きを読むに彼はそう言っているようだ。
人ではなかったようでソーライはひとまず安堵する。
しかしロボットであるならば、また別の問題が浮上してくる。シュラーも何度か言っていたが違法なのである。
(もう少し中の様子が分かればいいんだけど……)
目だけを動かして辺りを見回す。それから手頃な三階建てのビルに目を付けると、広げた新聞紙をたたんだ。
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