第十六話 最期の時
「ほお? この感触。これが不老不死の肉体か! 興味が尽きぬな!」
遥は守へと拳打を放ち続ける。マシンガンのように高速に放たれるその攻撃の全てを守は避ける事は出来なかった。現在進行形で守の急所を含め、本来であれば致命傷に繋がるような攻撃を受け続けている状態だ。
興奮した表情で攻撃を続ける遥に対し、攻撃を受けている守の表情は一切変わらない。これは痛みが全くない訳では無い。だが、それはまるで蚊に刺されたような、微かな痛みに過ぎなかった。
ダメージを与える事が出来ていない事実に遥は気付いていたが、そんなものは関係ないとばかりに攻撃を続けている。
「こんな事で満足出来ているのですか?」
守は思わず遥に問う。こんな事が、武の真髄とやらに繋がるのか? と。
「はははは! つれないな。最早私ではお前の相手は務まらないってとこか?」
答えになってない言葉に守の表情は曇っていく。はぐらかしているのか、開き直っているのか、守からみても、遥が今の守相手で通用しているかと聞かれると難しいところだ。どんなに破壊されようが瞬時に再生する身体。いくら遥が強かろうが相手になる筈がなかった。
「まぁ最期くらいは私に付き合え」
それでも戦い続ける遥を守は理解することが出来ない。感情を読み取ってもその中身は本当に戦う事しか考えてない。その事実に守は余計に困惑してしまうのだ。
だが、この均衡?ともいえる状況の終わりもすぐそこに迫っている。疲れる事を知らない守と人間である遥。時が経てば経つほどその差は拡がっていくばかりだった。
「愉しいなぁ、おい?」
それでも遥は嗤う。心の底からこの戦いを愉しんでいる。
「本当に楽しいんですか……?」
思わず守は問う。その言葉に一層遥の笑みは深まった。
「あぁ、愉しいとも。知らなかったか? 最期なんざこんなもんなんだよ。物語のように魔王が出てきて姫様が攫われる。そして勇者が魔王を倒して姫様を救い出し、そのままめでたしめでたし。そんなのは夢物語の中だけだ。実際には最期なんてもんはあっけなく終わるもんだよ」
喋りながらも攻撃は続く。そして攻撃する度に遥の攻撃はより苛烈になっていく。まるで本当に武を極めていくかのように……。
「そしてお前は余裕で私の相手しているだろう? 私なんて正直言えば一撃で殺せるだろう。だが、お前はそれが出来ない。なぜだかわかるか?」
守には遥が何を言いたいのかわからなかった。遥の心を読んでもこの戦いへの愉しみしか読み取れない。
「お前もいずれわかるさ。あぁ……本当に愉しかったな。けどそろそろそれも終わりのようだ」
それは突然起きた。遥の拳は守に当たる事なく、空を切り、そのまま倒れた。倒れた遥を見ると、遥は既に死んでいた。
「なんだったんだよ……」
もう動く事のない遥を抱えた守は、そのまま動く事が出来なかった。
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