第三話 どうやって追いつく?

 何とか瑠璃を泣き止ます事に成功したナナコと未羽。まだめそめそしてるが空を飛んで移動している守に追いつくには時間があまりない。今から追いつくには、瑠璃にも頑張ってもらうしかなかった。


 今もまた未羽が頭を撫でながら話しかけている。


「瑠璃ちゃん、瑠璃ちゃんもまもにぃと同じようにあの共鳴で全てを知ってるんだよね?」


 改めて確認するように瑠璃に訊ねる未羽。その後ろでナナコもなるべく追い詰めないように優しい表情で瑠璃の答えを待っている。


「パパと同じくらいるりもわかるなの。るりには難しい事だらけだからちんぷんかんぷんだけどなの」


 しょぼくれた表情だが、少しは元気が出て来たのか、漸くお互いに目を合わせて会話をする事が出来た。瑠璃が二人を信頼している証でもあった。それを見て二人は少し安心していた。


「まだ瑠璃ちゃんには難しいもんね? だけどさ、パパが行こうとしてる場所ならどう? わかる?」


 瑠璃にとって大好きなパパの事だ、一生懸命考えるあまりにうーんっと首を傾けて考え出す。今にも頭から煙が出てきそうな程悩んでいるその姿を真剣に見ていた未羽もまた、同じ方向に傾けてしまってナナコが後ろで吹き出していた。


 未羽がちょっと恥ずかしがって後ろを振り向くとそこには既に真顔になっているナナコの姿があった。笑っていたのを無かった事にしているらしい。頬を膨らます未羽。無かった事にするつもりはないようだ。


 暫く目で会話をしていたが取り付く島もない様子に溜め息を一つ吐いて未羽は改めて瑠璃の方へ向き直すと、ちょうど瑠璃も考えがまとまったのか、未羽の瞳をじっと見て来た。


「きっと、たぶん、おそらく大丈夫なの!!」


 若干不安になる回答ではあったが、瑠璃も場所を把握してる事がわかると一安心する二人。そうなると次の問題は――――。


「そうなるとどうやってまもにぃのところに行くかだよね」


 ある程度瑠璃が立ち直ったのを確認すると、立ち上がってナナコの方を振り向く。ナナコも同じように考えていたので未羽と目が合うとお互いに頷き合った。


「移動も大事だけど、こんな弱い状態じゃ守の邪魔をしちゃうわ」


 拳を握って溜め息を吐くナナコ。未羽もそれにつられて溜め息を吐いてしまった。守のところへ行くのは確定なのだが、邪魔しに行くのでは意味がない。このまま守のところへ行っても犬死するだけだ。それは二人が望む事ではない。


 二人で悩んでいると、不意に瑠璃の雰囲気がガラリと変わる。それを感じ取った二人が瑠璃の方を見ると、幼かったその表情がどこか大人びているように感じた。


 瑠璃が二人に問う。


「二人は最期の最期までまぁくんの為に戦う覚悟はあるのかしら?」


 急な変化に驚く二人だったが、瑠璃の元の姿を思い出し、すぐ冷静になった。そして二人の決意は固い。


「もちろん」


「まもにぃの為ならボクなんだってやるよっ!」


 即答で答える二人に満足そうに頷く瑠璃。


「それならよかったわ。二人とも私が元に戻る為に力になってほしいの。そうすれば、きっとまぁくんの元にも行けるはず――――いえ、行ってみせるわ」


「それが必要であるなら」


 力強く頷くナナコ。それを見て微笑む瑠璃。疑う事なくすぐに頷いてくれて嬉しかったようだ。


「けどどうやるの?」


 首を傾げながら訪ねる未羽。ナナコも真剣な表情で瑠璃を見る。瑠璃もまた、それに応えるように真剣な表情でナナコと未羽を交互に見た。


「あなた達の中にある守の血を――――私にくれない?」


 驚きの内容に二人は再び驚愕の表情になってしまうのだった。


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