第二話 残された者
「うわああああああああああああああああああん!!」
空に向かって泣き出した瑠璃。完全に取り乱している瑠璃は必死になって翼を生やすも空を飛び立つ事が出来ない。その姿を見て、ナナコも『
「やられたわね」
「うん」
未羽は自分の手を閉じたり開いたりと身体の調子を確かめている。どうやら身体が重たくなっているようだった。守によって三人とも力をそぎ落とされたからだ。
それにナナコも未羽も守の答えにショックを隠せないのだ。感情が共有されてしまった事でナナコの熱情も、未羽の家族としての愛も全て守に筒抜けになってしまっていた。だからこそあのタイミングで瑠璃とナナコは告白をしたのだから。
確かに答えは殆どわかっていたけど、三人を置いて行ってしまうのはひどいんじゃないか? そう思うところもあるが、一定の理解もある。前のように守がいなくなった事で取り乱すようなナナコはもういない、ナナコも成長したのだった。
それでもショックなのは間違いない。
(本気で告白したんだけどなぁ……)
二人は溜め息をつく。タイミングが重なってしまった事で二人は目が合い、お互いに苦笑いをしてしまった。未羽はナナコが思っている以上に落ち着いている事に最初は驚いていたが、なぜ落ち着いているのかを考えるとすぐに納得出来た。
二人ともこの可能性を想定していたからだ。
「まもにぃもほんと……そんなにボク達じゃ信用出来ないのかな?」
あからさまに頬を膨らませて怒る素振りを見せる未羽。
「それだけ私達が大事って事よ」
そう言ってナナコが苦笑いをしつつ、頬を突いて空気を抜く。
「あっ……」
ぷひゅーっと間抜けな音にちょっと恥ずかしくなった未羽。一つ咳払いをして、気を取り直すと、目線を守が飛び去った跡を見ていた。
「はぁ……。まぁある意味予想通りだよね」
守より少ないが共鳴によって得た情報を元に二人は考えた。そして守の今の肉体の状況も考える。
瑠璃の力も合わさった守はもう既に人でもゾンビでもない。それを越えたナニかだった。相手はその肉体が目的だったようだが、瑠璃のおかげで相手の予定より守が強くなった。そのおかげで怨敵でもあったけんじぃと眼鏡男を始末する事も出来、その後ろに潜んでいた黒幕を退く事が出来た。
そうなると守がその後に取る行動は想像がつく。守が自らけりを付けに行くだろうと……。
その時に出来る事なら一緒に戦いに行けたら嬉しかったが守の性格も考えると置いてかれる可能性も考慮しなければならなかった。そう、置いて行かれようともそれならば守を追いかければいい。そう思っていたが、ここで予定外の事が起きてしまった。
追いつく為の力を予定より抜かれてしまった事だ。これだけはよろしくなかった。力がなければ追いつく事も追いついたとしても力になる事も出来ないのだから。
「とりあえず瑠璃ちゃんを慰めないとね」
未羽がゆっくり瑠璃に近づくと背中を撫でる。すると未羽に抱き着き、胸元で泣き続けた。
その姿を見て、ナナコは守を叱ろうと心に誓う。
「パパなのに自分の娘を泣かすなんて何を考えてるんだか」
ナナコは守の飛び去った跡を一瞥した後、二人の元へと歩いていくのだった。
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