第五話 プレゼント
守達はそこから次々と研究所を潰していく。どこも同じような状況で、ナナコが『血操』でゾンビを養分にしつつそこの責任者をごう、あっと尋問。必要であれば瑠璃が無力化。未羽が万が一を考えて周囲を一応警戒してくれている。
あれ、守いらない子?
とそんな事はなく、尋問する際には守が前に立っている。どうしても女性が相手だと舐めてくる輩が多いからだ。特にゾンビ化をされている連中は本能が表に出やすいからか、好戦的になりやすい。守が瑠璃を守りたい、ナナコが守と一緒にいたい、未羽と瑠璃が家族が欲しい、といったようにゾンビ化すると理性と欲望が曖昧になるのだ。
そして尋問した結果、けんじぃと眼鏡男の居場所がわかる。こちらの都合よく一緒の場所にいるようだ。
(おそらく、これは罠だろう)
守はそう推察するが、突入する事を決める。危険ではあるが、二人同時に始末出来るチャンスを逃す訳にはいかないからだ。
そんな訳では四人は目的地となる研究所に向かっている。研究所といっても表は製薬会社になっているらしく、一般の人も働いているらしい。眼鏡男がそこの取締役でけんじぃが研究部門の所長をしている。
「ふぅ、辿り着いた」
といっても今着いたのは目的の製薬会社ではない。目の前にあるのは前回とは違ったショッピングモールだ。なぜショッピングモールに来たのかというと、
「守、助かったわ。それじゃちょっと待っててね」
「あ、ナナねぇ。ボクも行くっ!」
「ママとネェネが行くならるりも行くなの!!」
「なら一緒に行きましょうか?」
「うんなの!!」
そう、ナナコが行きたいとお願いしてきたからだ。それに伴って瑠璃と未羽も行きたいと言い出し、守は首を傾げながらも寄り道をする事になったのだ。
(なんか三人でヒソヒソしてたし、何か企んでるだろうが……)
その内容が全くわからない守は大人しく近くのベンチに座って待っている事にした。
暫くして三人戻ってくると、手を後ろにして何かを隠しているのが守の位置からでもわかった。
「何してたんだ?」
当然、何をしてたか気になった守は三人の顔を見ながら訪ねる。妙にニヤニヤしてる表情に居心地の悪さを感じていた。
すると、未羽が守の前まで来て後ろにしていた手を前に出すと、そこには一つの手のひらサイズの綺麗に梱包された箱があった。
何なのか見当もつかない守は受け取る事も出来ず、首を傾げるだけだった。
「もう、まもにぃ! 女の子が贈り物をしてるんだから素直に受け取るんだよっ。乙女心がわからないと女の子にモテないよ。ぷんぷんっ」
「あ、あぁ……」
とりあえず箱を受け取る守。見た目よりに軽いその箱は少し揺らすとかすかにカサカサと音がなっていた。
「開けていいか?」
「もちろんだよっ!」
未羽の最高の笑顔に守は思わず目を逸らしてしまう。照れてしまったのだ。
「あっ! まもにぃ照れてる! そんな顔されるとボクまで照れちゃうんだけどっ」
未羽を見ると確かに恥ずかしそうにしていた。お互い誤魔化すように咳払いをする。
「いや、だって、な。俺こういうのもらった事ないからな」
「え? そうなの!?」
まだ動揺していた守は思わず口を滑らせたしまった。とりあえずこれ以上余計な事を言わないように慌てて口を塞ぐ。それを未羽が無理矢理開こうとするが守は頑張ってそれを阻止するも、未羽の猛攻は止まらない。箱を横に置いて何とか未羽の手を掴むと、未羽の動きが漸く止まった。
「あぁ、もうやめろ! そんな事はどうでもいいだろ! 開けたいから離れろ!」
「ちぇっ」
はやく開けてもらいたい未羽は口をとがらせながらも渋々離れた。それに安堵した守は改めて箱を持ち、裏側の粘着部分を剥がした。そしてそのまま梱包を破らないように丁寧に開けると、そこにはシンプルなミサンガが入っていた。
「ミサンガ?」
「そうだよっ。みんながこれからもずっと一緒にいられますようにってボクお願いしといたんだから」
箱にあるミサンガを未羽がとると、その場にしゃがみこんだ。
「手首だと戦ってる時になくしちゃうからこっちに着けるよ。ちょっとズボン上げるね」
無造作にズボンをまくり、足首を露わにすると、ゆっくり外れないように硬く縛る。縛り終わると様子を伺うように守を見つめた。感想がほしいようだ。
「未羽、ありがとう。大事にするよ」
立ち上がって未羽の頭を優しく撫でると、未羽が嬉しそうにしている。それを見て守も嬉しくなったが、未羽の後ろから次の気配がするので名残惜しそうではあったが未羽が一歩後ろに下がる。
すると次は、瑠璃が駆け足で未羽の前に立った。
「パパ、るりからの贈り物なの!!」
そういうとさっと後ろにしていた手を前に出すのであった。
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少し長くなってしまった為、瑠璃、ナナコからの贈り物は次の更新にします。楽しみにお待ちください。
世の中はバレンタインデーだったので、ちょっと寄り道させてみました。日頃の感謝の気持ちって大事ですね。私もこの作品を読んでくださってるみなさまには感謝しております。いつもありがとうございます!
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