第六話 繋がり
瑠璃はニコニコしながら未羽と同じくらいの箱を守に渡した。ピンク色した包み紙にこれまた可愛らしいリボンが飾られている。
「パパ、どうぞなの!!」
守は瑠璃の表情を見て心が躍る気持ちになる。焦る気持ちを抑えて、未羽の時と同様にゆっくりと梱包を剥がしていく。
梱包を剥がすとそこには真っ黒に塗りつぶされた箱が現れた。梱包からの想像出来なかった見た目に思わずぎょっとしてしまう守。瑠璃の方を見ると、相変わらず愛らしい笑顔で守を見つめている。
(何で真っ黒なんだ……?)
とにかく中身を確認しないとわからない為、先程の未羽の時とはまた違った感じの緊張した面持ちで箱をゆっくりと開けた。
開けてみるとそこには緩衝材が詰められていて、その真ん中にビー玉サイズのまるで黒曜石みたいに真っ黒に輝いた玉石が置かれていた。
「石?」
どういう理由で石にしたのか訳が分からない。恐る恐る瑠璃の方を見ると、先程までのニコニコした顔が嘘のように真剣な顔で守を見つめていた。
「パパとるりを繋ぐ大事な石なの。今、るりがしっかりパパに渡すなの。出来れば目を閉じてほしいなの」
そういうと、玉石を瑠璃が持ち、そのまま口に加える。何をしようとしているのかわからないが、とりあえず言われた通りに目を閉じた。
すると、守の頬が瑠璃の柔らかい手によって包まれる。守は、まるで上質なシルクのようにきめ細やかなその肌の感触に若干くすぐったくなり、一瞬動きそうになる。だが、動こうとしたその瞬間、予想以上に強い力を瑠璃から感じ、全く動けずに掴まれたまま状態になってしまった。
「るぅ?」
話しかけるが返事はない。不安になり、目を開けようとするとその瞬間に唇にこれまで味わったことのない柔らかい感触がやってくる。そして、口の中に広がる甘い香りと、ビー玉サイズの固いモノが押し込まれる。なぜかそれを守は抵抗する事が出来ず、そのままそれを飲み込んでしまった。
なおも甘い感触は続き、守は目を開けると、目の前には幼い瑠璃の顔があった。ナニをされていたか悟った守は慌てて抵抗する。すると、瑠璃は名残惜しそうにしながらもゆっくり離れる。唇と唇からは透明な橋がかかり、ゆっくりと消えていった。
人間であれば真っ赤になっていたであろう蕩けた表情をしている瑠璃。そこには小学生の姿ではなく、当時の姿が重なって見えた。
「るぅ……?」
予想外の出来事に瑠璃から目が離せなくなっていた守。鼓動はうるさいくらいに高鳴っていた。
「これでるりとパパが繋がったなの!!」
いつの間にかいつものニコニコとした表情に戻って離れていく瑠璃。そのギャップに戸惑っといる間にナナコが守の目の前にやってきていた。
「あ、ナナコさ――――」
ナナコの姿を見た時、守は今度は違う意味で固まる。
ナナコはぷるぷると震え、恨めしそうに守を見ていた。これはまずいと思った時には既に遅く、用意していたプレゼントを投げ捨て、突然服を脱ぎ出そうとした。
「ナ、ナナコさん落ち着いてっ!」
「守、離してください! 瑠璃ちゃんを超えるにはもうこれしかっ!!」
何とか抑えるも『血操』を使って守を拘束して動けないようにして脱ぎだすナナコ。何とか未羽が抑えようとするが、興奮していて暴走しているナナコはついには未羽まで『血操』で脱がしだす。
「ナナねぇ待って。お願いっ。まもにぃも見ないでっ」
泣きそうな表情で身体をよじらせている未羽。現場は混沌とするのであった。
多大な犠牲を出したが、なんとか事態を収拾させた三人。特に未羽のダメージが大きかった。
それはそうと、現場が落ち着いたところで周囲を見回すと元凶である瑠璃がいなくなっている事に気付く。守が気配を探ると、ショッピングモールの中にいるようだった。心配になった三人は慌ててショッピングモールに走っていく。
すると三人のやりとりに飽きていたのか、瑠璃は適当なお店に入ってお菓子を食べていた。
「こ、これは違うなの! 陰謀だなの!!」
お口いっぱいにチョコを付けた姿を見た三人は思わず笑ってしまうのだった。
ひとしきり笑われたあと、しっかりとお叱りを受けた瑠璃は、涙目になりながら守に抱っこされて歩いている。瑠璃の頭を撫でながら次の目的地の方を見ている守。
(けんじぃと眼鏡男の匂いがするな。間違いなく次のところにいる)
瑠璃に飲まされた黒い玉石は気になるが、瑠璃には話をはぐらかされるだけで教えてもらえなかった。
(瑠璃の意図はわからない。まぁどちらにせよ、俺は叩きのめすだけだ)
目的の研究所に辿り着いた。他の研究所と同様に嫌な匂いと死の匂いに包まれている。ただ、他と違うのは覚えのある匂いがするだけだ。
「よし、行くぞ」
三人が返事すると、守が先頭を歩き出す。二人との最後の戦いは近い。
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バレンタインデーの後半ネタです。瑠璃が結構ぶちこんできました。未羽の涙目可愛い。
ちなみにナナコが渡そうとしていたのは、『指輪』でした。夫婦なんだから結婚指輪しないとねって感じに当然のように守の指のサイズを選び、用意してました。
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