第四話 拷問

「マジでみんな死んでるな……」


 建物の地下に入ってすぐに倒れているゾンビ達の数はざっと百体。その中には勿論、強化ゾンビも含まれている。そして残る反応は一番奥にいるであろう嫌な匂いのするモノ(虫の息)。


 相手が悪者だからいいものの、ナナコがやった事は一般的にいけばバイオテロみたいなものだ。今更ながらナナコの所業に背中から冷や汗をかく守。未羽はもう慣れたもので全く気にしていない。瑠璃は強いママに大喜びだ。


(あれ、まともなの俺だけ!?)


 この状況に守は自分が最後の砦だと決意を新たに中へと進んでいく。誰もかれもが自分を顧みる事は難しいのだ。


「なぁるぅ、ここにいるやつはどんな悪い奴なんだ?」


 とりあえず勢いのまま入ってしまったので情報が欲しい守は、事の発端となった瑠璃から話を聞いてみる事にした。ナナコも未羽も気になるのか、瑠璃の言葉を待っているのがわかる。


「えっとね! ここはゾンビさんを強くしてるところなの!!」


「強くってのは、ここにいる大きなゾンビの事か?」


「そうなの!!」


 既に動かないゾンビ達だが、どうやらこの研究所で強化されていたらしい。誰かさんのおかげで実感はわかないが。ちなみに瑠璃曰く、同じような場所が何か所かあり、ここはその一つとの事だ。


 守は試しに歩きながら何か所か扉を開けてみると、とても瑠璃には見せられないようなグロテスクな事が行われていた跡が残っていた。瑠璃の言っている事に間違いはなさそうだ。


 話をしながらも先へと進んでいく。前回の研究所と違い、今回は戦闘が全くない。ナナコが全て養分にしてしまったからだ。


 何の苦難もトラブルもなく、一番奥の部屋まで辿り着いてしまった。本来喜ばしい筈だが、どこか物足りなさを感じる守。


(いやいや、体力の温存だと思えばこれがベストだから)


 自分にそう言い聞かせて最後の扉を開いた。部屋の中にそのまま入ると目の前にはいかにも偉い人が座る感じの椅子に重厚感のある机がどかんと並べられていた。そしてそこで横たわるのは勿論ここの親玉だ。


 その男は白衣を着ていて、いかにも研究者といった雰囲気だ。そんな男も今では意図的に死なない程度に痛めつけられた哀れな子羊だ。逃げるどころか指一本動かす事も出来ないこの男は意識だけ残されているのか、あきらかに怯えているようだった。


 この男からも一応死の匂いが混じっている。おそらくけんじぃと同じなのだろうと守は推測する。じっと男を見ていると、男は威勢は弱いが騒ぎ出す。


「お、お前らは何者だ!? ここをどこだと思っている!」


 器用に怒るやつだな。と全く関係ない事を思いながら男達を見下ろす四人のその冷めた目に男は怯みそうになる。そこに座り込んで目を合わせる守。


「誰だっていいだろ? それよりこちらからの質問だ。なぁお前達の親分はどこにいるんだ?」


 駆け引きなんて必要ない。力の差は歴然としていて、逆らう余力さえないのだから。


「そ、それは言えん!!」


 それでもこの男は口を割るつもりはないらしい。だが、その選択が正しいとは限らない。


「そしたら無理矢理話してもらう訳だけど」


 男の目の前に赤く輝くその鉈は男の頬をかすめるように地面に突き刺さる。ナナコの『紅鉈クレナイノナタ』だ。


「ひぃ!? そ、そんな事したって無駄だ。俺には痛覚なんてとっくにないんだ! 何をしたって何も話さん!!」


 どうやら強気になっていたのは拷問を受けても平気だという妄信からきているようだった。だが、それは所詮妄想でしかない事がここで証明されてしまう。


「それならるりに任せるなの!」


 すっと手を男に伸ばして触れた瞬間、男から死の匂いが消え去った。


「な、何をしたんだ??」


 まだ何が起きたかわかっていない男は、何か違和感を感じつつも喚き続ける。段々とその煩さしさにナナコが『紅鉈』で男の指を一本落とした。


「え? あ、が、が、いたい! な、何でいだいの!?」


「なぁ、俺の仲間達はそんなに気が長くないんだ。話してくれないか?」


 なぜ痛みが戻ったのか理解できない男はその言葉に黙ってしまう。


 その姿を見て、口角を上げるナナコ。男がナナコを見るとナナコが見せつけるように『紅鉈』を持ち上げる。


「や、やめてくれ! お、お願いだ!! 何でも話すから!!」


 四人による拷問は続く。結局、拷問が終わったのは次の日だった。


 そして四人は建物から出てくる。そして男の情報を元に次の目的地まで向かうのであった。


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