第十三話 さまざまなゾンビ達
その後も散発的にゾンビが出てきたが、無事にゾンビ達を全滅させた守達。そして、今は地下を歩き始めていた。一階から上と違い、地下はしっかりと灯りがついている為、足元が見えやすく先程より歩きやすかった。その分、ゾンビからの襲撃も多く、その度に守は瑠璃を守りながら進み続けていた。
今も、壁を突き破って数体のゾンビ達が守達の前に現れていた。
(それにしてもゾンビの数が多い。ここに来るのがバレてたのか、それなら何でバレたのか……)
一瞬、瑠璃の方を振り向いたが再び前を向く。普段では絶対ありえない事だが、ほんの一瞬瑠璃の事を疑ってしまった。それを深く落ち込む守。だが、守の直感が何かを訴えていたのだ。その直感を無視して目の前にゾンビ達に視線を向ける。
「ウガアアアアアアアア!!」
「うるせえ!!」
二メートル近い入院着を着ているゾンビが守に向かって拳を振り下ろす。見た目からしておそらく元々はこの病院で入院していた患者なのだろう、そう判断し、守は哀れみの表情で一瞬浮かべるが、すぐに切り替え、ゾンビの拳に自らの拳を合わせ、力で押し返し、吹き飛ばす。勢いよく吹き飛ばされたゾンビは他のゾンビを巻き込みながらそのまま壁にめり込んだ。もがいても身動きが取れなくなったところで、守がそのままゾンビに迫り、顔面に追撃をくらわす。グシャッっとトマトが潰れたような音と共にゾンビの頭をそのまま叩き潰した。
顔面から離すと、返り血が右腕から大量に滴り落ちているのがわかった。煩わしそうに返り血を振り払うと、守は次のゾンビへ向かって走り出した。
周囲を見ると、先程吹き飛ばされた時に巻き込まれたゾンビ達は既に立ち上がってこちらに向かってきていた。その中には看護師の格好をしていたり、医者の白衣を着たゾンビもいる。さらに子供のゾンビもいた。大人のゾンビは年寄だろうがなんだろうが肉体が強化されていたが、子供のゾンビはわざとなのか、見た目も肉体強化をされていない。
そんなゾンビ達を守はどんな姿だろうが一切関係なく、一体一体叩き潰していく。
(俺は気にしないが、もし普通の人であれば攻撃に躊躇してしまうかもしれないな。実際に紛争地帯なんかでは『子供兵士』なんてものがいるくらいだ。歴戦の兵隊なんかでも攻撃を戸惑う事もあるらしいし。……るぅには十分ダメージ与えられてるしな)
瑠璃の方を見ると、医者のゾンビや子供のゾンビを見る度に哀しい顔をしている。咄嗟に手を伸ばして、今いるゾンビ達を元に戻す事を考えているようだったが、数も多く、既に戻したとしても死体に戻ってしまう事、自分の体力がもたない事を理解している為、すぐに伸ばそうとしていた手を下ろしてしまった。
そしてそんな自分に瑠璃はさらに沈んでいくのであった。
その場にいたゾンビ達を全て倒した後、瑠璃のところへ守は戻ってきた。
「るぅ、悪いのはるぅじゃない。こんな事を平気でやってる奴らが悪いんだ」
「うん……」
この力の根本になっている瑠璃の表情は暗い。いくら悪くないと言われても目の前に見せられた現実を見てしまうと責任を感じてしまうのは仕方のない事だった。
「はやくこんな惨劇は終わらせよう」
「うん、うん。そうだね!」
少し考えたのちに力強く返事をする瑠璃。無理矢理気持ちを切り替えようとしていたのは守にもわかっていたが、あえて何も言わなかった。その姿を見てから守は再び前を向き、瑠璃と共に走り出す。
それから数十体のゾンビ達を追加で倒しながら先へと進んでいった。
そして走れば走る程、嫌な匂いと死の匂いは濃くなっていく。この先で碌な事が起きないのは間違いないだろう。気にせずそのまま一本道を暫く走り続けると、一つの両開きの扉が目の前に出てくる。他の扉と違い、若干ではあるが扉の周りに装飾が施されていた。
「まるでゲームのボス戦みたいだな。ホント悪趣味なことで」
「え?」
ふと思った言葉が口に出てしまい、瑠璃が首を傾げている。
「俺がたまにやってるゲーム、ロールプレイングゲームってさ、こういう扉があったりすると、その先にボスが待ってたりするんだ。だからこの扉もそうなのかなって、ふと思っちまっただけだよ」
「そういうもんなんだね」
家が元々厳しかった瑠璃はゲーム自体をやった事がない。ゲームどころかアニメも殆ど見た事がなかった。おそらく学校で友人から少し話を聞いた事がある程度なんだろう。ピンとこない瑠璃の頭を優しく撫でると目の前の扉に近づく。
近づけば近づくほど嫌な匂いと死の匂いが濃くなっていく。コックの時を遥かに超える匂いに背を向けたくなるが逃げる訳にはいかない。
力を振り絞って守は扉を押すのであった。
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