第十七話 守と遥の戦い

 全身から力が溢れてくる。守はこの力を使ってからそう感じていた。力を込めれば車だって持ち上げられ、たとえ銃弾で撃たれようとその身体を傷つける事は出来ない。


 瞳が真紅に染まり、全身が紫色に変化する。それに合わせ、全身の血管はほのかに赤く輝き、脈動がうごめく。その姿の守はもはや、ゾンビというより悪魔だ。遥と守を囲むように包囲している男達からは悲鳴が上がってきている。


(ビビってるなら最初から手を出してくるんじゃねぇよ。だが、今はこんな奴らより――――)


「遥さん、今助けます」


 全力で一気に遥に迫ると、そのまま頭部にふんわりと掌底突きをくらわせる。その威力ははっきり言えば大した事ない。だが、触れた瞬間、人にはわからない程の僅かな振動を与え、それが遥の全身を巡っていった。その感触を守は細かく察知し、どこかに違和感がないのか確認しているのだ。この技は五感が鋭くなった事で出来るようになったのだが、本来は人体を破壊する技だ。相手がたとえ人間だろうと、ゾンビだろうと内部から全てを破壊する威力を秘めている。今回はそれをより緻密ちみつに行ったのだ。


 これはただ強化しただけでは出来る技ではなかった。未羽との訓練の成果により、より力の使い方を学んだ事で、余計なダメージを与えずに調べる事が出来たのだった。


 そしてその結果、胸部に五センチ程の物体が埋め込まれている事がわかった。後はこれを遥から傷つけずに取り外すだけ。そう思った瞬間、守は胸に違和感を覚え、この身体になってから初めての激痛に襲われる。


「ぐぅっ!」


 守が遥の内部を探っている間に遥が守の胸部に指で触れ、心臓部に強烈な衝撃を与えたのだ。その衝撃によって心臓が潰れかけたが、すぐに守の身体はそれを修復、強化しようとしていく。口から血が垂れながらも、ここで遥から離れる訳にはいかなかった守は、足をその場に踏ん張らせ、その場にとどまる。守が『全身強化』を使っていられる時間はそれほど長くない。ここで下がってしまったらせっかくのチャンスを失ってしまうのだ。


(保てて数分。その間に決着をつける!)


 まずは調べるのに邪魔になる遥の上半身の服を破り捨てる。これは実際に目視する必要があるからだ。


「遥さん、ごめんなさい」


 控えめな胸部のすぐ上にあったのは、探ってた通り、てんとう虫のような形をした物体だった。ただ、身体に僅かながらに突き刺さっているようで、無理矢理引き抜いて問題ないのかがわからなかった。だが、それを確かめる方法も時間もなかった。


(多少傷つける結果になってもこれを壊す! どちらにせよ、これを壊せなきゃ遥さんを助けられないんだ!!)


 先程と同様に掌底突きを機械に向かって放つが、遥がそれを避け、逆に守の胸部へとカウンターを放ってくる。それを守は左腕で受け止め、衝撃に耐える。あまりの衝撃に左腕が後ろに吹き飛ばされ、体勢が崩れてしまった。


(いつ見ても理不尽な技だな、ほんと! だが、さっきとは違って、あきらかにこの機械を壊されないように動いてる。やはりこいつを壊せばなんとかなるんだ!)


 半ば自分に言い聞かせながら、僅かしか動かせなくなった左腕の事への負担を無視して体勢を戻す。そして、目の前には既に遥がいて守るに向かって指を伸ばしていた。それを無理矢理動かした左腕で再び受け止め、再び衝撃を受けると、今度はその衝撃の勢いを利用して一回転し、そのまま遥についている機械に無傷な右手で掌底突きをくらわせた。触れた瞬間にてんとう虫の背中の部分からヒビが拡がり、そのまま小さな爆発が起きると破片が崩れ去っていった。


 そのまま意識を失った遥を守が片手で抱きかかえる。それと同時に守も元に戻るのだった。


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