第十四話 未羽を変えた血
頭を押さえるように苦しみだす未羽。目からは血の涙が流れ、その場に蹲った。その様子を見て一番驚いていたのはけんじぃだ。
「何が起きたのじゃ!? 『フィーア』の数値に異常が起きとる!
スマホを必死に弄っているけんじぃを見て、ナナコがほくそ笑む。
(私の事をバカにするからよ。それにしてもきついわね……)
傍から見えるとナナコが
ナナコがコックとの戦いの後に目覚めた特性は『血操』。読んで字のごとく、血を操る力だ。なぜこの力が目覚めたのかはナナコにもわからない。だが、ナナコは守から血をもらった事で命をもらい、その血を特別に想ってきた。
最初は体内にある血液を意識するだけでどのように流れているのかわかるようになった。次に流れていく方向を自由に操れるようになった。不思議と逆流させても苦しくなる事はなく、改めて人間じゃない事に凹んだのは苦い思い出だった。
そして細かく操作しているうちに血を体外に出してもそのまま操作出来る事に気が付いた。初めは一滴。雨の雫が垂れるように動くだけだった。次第にサイズを変え、自分の血液の量に依存しているが、霧状にしたり、滝のような雨を降らせる事も出来るようになった。
そして今回行ってるのは霧状にし、未羽の体内に侵入する事で、未羽を変えてしまったゾンビウィルスを排除するつもりだ。もし、けんじぃが血が原因な事を話していなかったら出来ない戦法で、偶々この特性に目覚めていなかったら未羽を殺すしかなかった。
改めて守への愛を感じ(一方的に)、歓喜しているナナコ。
(守のおかげで未羽ちゃんを助けられるかもしれない)
意識が遠くなるのをなんとか踏ん張る。今、未羽の体内では、ナナコの血液が未羽の体内にある異物を排除する為に動き回っている。一歩間違えれば血管が破裂し、未羽が死んでしまう可能性のあるこの行動は一種の賭けだ。
だが、ナナコは必死になって原因となっているウィルスを徐々に排除していった。目から流れている涙がその証拠だった。
(このままいけばなんとか……!!)
そう、このままいけば何も問題なく未羽を人間に戻せる筈だった。
「実験は中止じゃ! 『フィーア』を失う訳にはいかん。早くあの
どうやっているかまではけんじぃにもわかっていないようだったが、ナナコが原因になっているのだけはわかった。
一斉にナナコへと銃口を向けた男達。それを見てナナコは苦悶の表情を浮かべる。
(流石にここで邪魔されるのはまずいかも……)
そして一斉に撃ちだした男達。中身はゾンビウィルスを一時的に鎮静化させる物でナナコであっても着弾した場合は無事では済まなかった。
「『
ナナコが咄嗟に行ったのは、血を自分の周囲に固めて結界のように自分を守る事だった。だが、『血界』を未羽のウィルスを排除する作業と同時にする事までは出来なかった。
結果、ナナコの血を限界まで使ってしまい、意識は遠のく。
(後ちょっとだったのに……)
『血界』が崩れ、そのまま液体へと戻ったナナコの血は、ナナコの元へ戻る事なく地面を濡らした。
そのまま倒れそうになったその時、ナナコを抱きかかえてくれる存在が現れた。
「ナナねぇ、ありがとう。ここからはボクに任せてね♪」
ナナコを抱きかかえた未羽は、そのままゆっくり寝かすと、男達に向かって木刀を向ける。
「ボク、全部思い出したんだから。絶対、あなたたちの事を許さない。お母さんの仇、今こそ取らせてもらうよ」
獰猛な猛禽類のような眼で男達に向かって走り出す。ナナコに代わって、未羽の戦いがここに始まった。
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