第四話 ナナコの気持ち

 人であったモノで溢れるショッピングモールの一階。守とナナコはそのど真ん中に立っていた。


(一階はゾンビで溢れているな)


 ちなみに屋上は駐車場になっている。守はまず、外部からの侵入者に対しての安全性を確認する為、ナナコと一緒に周辺とショッピングモールの屋上へ向かった。その後、安全を確認出来たので正面から入っていったのだ。


(屋上の出入り口にるぅが乗ってたマイクロバスが置いてあったのは確認出来た。マイクロバスをバリケードにする事で中に入ったんだろう)


 扉にピッタリ付ける事でゾンビが入り込めないようにしたようだ。


 まぁ侵入方法はいいとして、とりあえずこのショッピングモールの中に幼馴染がいる事は匂いでわかった。ただ、その場所までは守にもわからない。


(雑多な匂いと嫌な匂いが強すぎる……)


 見た限りでは一階は諦めて、二階と三階が避難場所になっているようだ。階段を防火扉で封鎖し、どうやってかわからないが一階と二階を結ぶエスカレーターが倒壊している。自然に壊れる物ではないので誰かがやったのだろうが、今は誰がやったかは問題ではない。とにかくゾンビを上にあげられないようにする事で、安全性を確保したんだろう。これまでで、一番生存者数が多い為、守でも細かい匂いの違いが判断出来ないのと、それ以上にのだ。


 ここで驚きなのが、嫌な匂いが一番強いのはにあるステーキ屋だった。


(ナナコさんが逃げたくなる訳だよ……。俺だって理由が無ければ逃げたくなる)


 だが、そういう訳にはいかない。気持ちを引き締めて、まずは一階の嫌な匂いから一番遠い場所の探索から開始する。


 今回の嫌な匂いがする場所は相当な奴がいると思われる。排除するにはそれ相応の準備が必要で、その準備の為にも一階フロアに何があるか確認しなければならない。適切に用意をする為にも必要な事だ。


 それに――。ナナコの方を向くと首を大きく横に振っていた。


(心の準備も必要だよな)


 きついものはきついのだ。









 一階フロアを端からウロウロしていると、時折、上からチラチラと人影が一階を覗いているのが見える。下にゾンビがいるだけで落ち着かないのだろう。


 二人も上の様子を伺いながら一階フロアの各店舗を見ていく。


 一階にもさまざまな店舗があるが、このパンデミックが発生してからそれなりに日にちも経過している為、飲食店や、併設されているスーパーにある食糧の大半はダメになっている。さらに棚の中も荒らされ、床が物で溢れている場所も少なくなかった。その上をゾンビ達は気にせず歩く為、壊れて使えなくなってしまった物も多い。


(あ、この服可愛いけど、泥だらけだ……)


 嫌な匂いから離れた事で気持ちに余裕の出来たナナコは、適当に落ちている服を拾っては捨てる事を繰り返している。そして、服を捨てると守のところまで戻ってそのまま腕にくっつくのだ。


 ナナコは守から離れたくない。ナナコには、あの時の死んだ感覚が残っている。そう、ナナコは確かに一度死んでいるのだ。


 最初は自分で選んだ死に方をしたかっただけだった。あんなゲスに犯され、ボロボロにされ、最後にはゾンビに惨たらしく襲われて一生を終える。それが嫌だった。幸いにも目の前に助けに来たであろう? ゾンビは優しそうで、何よりナナコの好みだった。よくわからないが自我があるみたいで話しかけると返事もしてくれた。初めて会っただけの存在にあんなに悲しい表情もしてくれた。だから最期は守の一部になる事を選んだし、そのまま一生を終える筈だった。ところが、実際にはゾンビとなって再び生きる事が出来るようになった(生きていると言っていいかは不明だが)。


 そして、ナナコは守に首に噛まれた時、心に衝撃を受けた。不思議と痛みはなく、むしろ守と一体となった感覚には心地よさすら感じた。むしろずっとこのままでいたいとさえ思ってしまった位だ。


 そこからはナナコにとって守はもう他人ではなくなってしまった。守にはまだその感覚がないようだが、ナナコにとって守は、自分の半身のような存在だ。既に好きだとか愛だとかそういう状況を超えてしまっている。


 守がどう思ってたって構わない。これはナナコのエゴなのだから。奇しくも、この想いは守が幼馴染に想っている感情と同じだった。


 先程は、二人の安全を優先したが、守が突き進むというのであれば、ナナコはそれに従うつもりだ。もう守から離れるつもりはないのだから。たとえその先が地獄であったとしても。


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