第八話 豪邸襲撃

 逃げ出した男達は放っておいて、正門を全開に開ける。一部のゾンビは、投げ出された女の死体に噛り付いているが、バカな男達が叫びながら逃げた為、それを追いかけて豪邸の庭へと侵入を果たしている数もそれなりに多い。


(まさかあんなとこに隠れてるなんて誰も思わないだろうな)


 今回の作戦はゾンビだからこそ出来る事だ。普通の人間ではあそこで待機してるだけで襲われる。


(ゾンビに襲われないって事がどれだけこの世界で有利なのかよくわかるな)


 あとは、この嫌な匂いの元を絶つだけだ。幼馴染に危害を加える可能性がある害悪は処分せざるを得ない。


 ゾンビ達が侵入している中、守はまだ入口で見ているだけだった。当たり前だが、まだ安全とはいえないし、守はゾンビといっても不死身ではない。おそらくだが、頭部を攻撃されれば死ぬ。そして出来ればケガもしたくなかった。







 ゾンビ達がゆっくりと進んでいく中、豪邸の中は大騒ぎになっていた。


「おい、どういう事だ!!」


 ツバをまき散らしながら叫ぶ男。目の前には死体を処理していた男達三人が正座をさせられている。


「だ、だってよ、急に鉄パイプが門の柵に伸びてきたせいで、柵が引っかかっちまって閉められなくなっちまったんだよ!!」


 三人の中でもリーダー格の男が身振り手振りで説明するが、男の機嫌は悪くなる一方だ。


「ご主人様。こうなってしまっては……」


「わかっておる! 車に向かうぞ!!」


「はっ!」


「あ、あの俺達は……?」


 先程までが嘘のようにニヤニヤした表情に変わる男に、三人は後ずさる。


「今までご苦労だった」


 おもむろに取り出した銃で三人の足を撃ち抜く。


「ぐっ!」


「いてぇよ……。いてぇよ……」


「う、裏切りやがったな!?」


「そこで野垂死ぬがよい」


 苦しむ姿を見て満足そうにすると、窓に向かって発砲する。窓ガラスが割れる大きな音がし、ゾンビ達がその音に反応して近づいていく。


 その様子を見た後、男は執事を連れて部屋を出て行った。


 そして残された男達。ここは一階で窓ガラスが割れた事で豪邸の中に侵入が出来るようになってしまっていた。逃げ出そうにも、足の痛みにすぐに立ち上がる事は出来ない。


「くそ……! くそおおおおお!!」


 外にまで響き渡る悲鳴は少しずつ、確実に減っていき、やがてなくなっていった。


 その様子を少し離れたところで観察している守。


(わざと音を立てて誘導してるのか……?)


 このような悲鳴は一か所だけではなかった。移動する度に窓ガラスを割ったり、生き残っていた人間の悲鳴を上げさせているのは外から見ていてあきらかだった。


(反吐が出るな)


 自分達が逃げる為に、一緒に生き残っていた人達を犠牲にしているのだろう。だが、どうやって逃げ出すつもりなんだ??


 疑問の答えはすぐに返ってきた。車庫のシャッターが開くとそこから出てきたのは自衛隊が使うような装甲車だった。ゾンビを引き殺しながら走り出している。守は追いかけようと思ったが、車が相手だ、あっという間に正門を走り抜け、どこかへ走り出してしまった。


(正門を全開にしたのが失敗だったか……)


 後悔しても遅かった。今の守に車を追いかける手段はない。


(まぁ追い出したからいいとしよう)


 終わった事は仕方ないので気持ちを切り替えると、豪邸の様子を観察する。既に悲鳴がなくなり、今ではゾンビのうめき声だけになっていた。


 最初は豪邸はこのまま無視して出ていく予定だったが、守は気になる匂いに気が付いた。


(無視するべきか、確かめに行くべきか……)


 迷ったすえに気になる気持ちが勝った為、守は静かになったその豪邸の中へと入っていくのだった。


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