第6話 お前、もしかして……
俺は洞窟の前に立っていた。漆黒の刀をぶら下げて。
「よし!」
気合を入れた。これから入るこの洞窟は、初期エリアでは最難関の洞窟だ。推奨レベルは15~20レベル。対して今の俺のレベルは3だ。はっきり言って無謀もいいところだ。だが、ここまでの道中で狩ったスライムだの、ゴブリンだのは【虚空刀ミナギ】の相手にはならなかった。みんな空を斬る見えない斬撃で真っ二つで終わりだ。
俺は世界一位になりたいが、世界一位になるまでのプロセスも楽しみたい。レベル10以上のハンデなんて、むしろちょうどいい。
俺は洞窟に入る。中は薄暗くジメッとしている。壁には所々から顔を出している鉱石が洞窟内を青白く照らしている。少し進むと、早速モンスターが現れた。
現れたのは、虎とも狼ともつかないモンスターだった。レッサーラッカルだったか。
こいつを倒すには、まずは剣技が必要だ。俺は腰に携えた漆黒の一振りを引き抜く。そして――
「ハッ!!」
抜刀術を放った。空を薙ぐ。そして、レッサーラッカルの体が二つに分かれる。
「あれ?」
一撃で倒したぞ? いや、おかしいな……。俺は首を傾げながらも先に進むことにした。その後も、何度かレッサーラッカルと遭遇したが、その全てが一撃必殺となった。
「なんだろう、この感覚」
もしかして。もしかしてだけど、虚空刀って固定ダメージ入るのだろうか。そんな気がしてならない。俺は世界ランク一位の男との戦いを想起する。だから、一撃一撃が重かったのだろうか。
だが、虚空刀の性能に関する情報は開示されていなかったため、詳しいことは分からなかった。
そんなことを考えているうちに、ボス部屋に到着したようだ。そこには大きな体躯を持つ魔物がいた。
『クォオオオッ!!』
現れたのは、華やかな尻尾が特徴のクイーンラッカルだった。おまけに二体のレッサーラッカルを連れている。
お前なら流石に大丈夫だよな?
俺はクイーンラッカルの青い瞳を見ながら確認するかのように呟く。
「さぁ、かかってこいよ」
こうして、俺とクイーンラッカルたちとの死闘が始まるはずだった。
◆
真っ二つに分かれた魔物の死体が3つ。そして、目の前にはシルバーの宝箱が現れた。
開けたら中には銀色の指輪が入っていた。
レベル、気づいたら13レベルになってた。
俺は立ち尽くしながら【虚空刀ミナギ】を見つめて、心のなかで語りかける。
お前、固定ダメージ持ってるんだな。
うん。封印決定。
◆
「すみません」
「あれ、君は昨日の」
「はい。昨日はお世話になりました」
「こちらこそ。ところで、今日は何を探しに?」
「10万圓程で買える剣を一つ」
「あぁ、それならこれかな。『斬魔刀』だね」
「ざま……なんです?」
「ザンマトウ。これは悪魔や悪霊の類に対して特攻効果のある刀だよ。聖水をかけても大丈夫な作りになっているから手入れが簡単だし、値段の割には良い品だ」
「あ、じゃあそれでお願いします」
店を出ると、白銀の刀を目の前に掲げた。
よし。よろしくな、ザンマトウ。ザンマトウ……。ザンマトウって語感悪いし、なんか言いづらいなぁ。うーん。まぁ、サンマでいっか。
俺はサンマをインベントリに仕舞うと、ホクホク顔で宿屋に戻るのだった。
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