第8話 肉まんの口
今夜は少し肌寒い。
なので会社の帰りにコンビニでホカホカの肉まんとあんまんを買った。
私の中ではまず肉まんを食べて、そしてあんまんを食べるというルーティーンがある。
まずメインディッシュの『お肉』を食べてからスイーツ、みたいな。
だから家に帰った時には、既に肉まんの口の中になっていた。
でも肉まんの口ってなんだろう。
まあいいや。
そしていつも必ず中華まんについてる紙に、肉まん、あんまんと書いてあるので、確認してから食べる。
スイーツを食べてから、メインディッシュに行くわけにはいかない。
そしてレンジで軽くチンして、食べようとした時に、友達からLINEが来た。
たわいない内容なのでスタンプを返した流れで、袋の中の中華まんをつかんで、口にした。
中華まんについてる紙を見ずに。
しまった。
取り返しのつかないことをしてしまった。
でもまだ、ハニュっと甘噛みしたような状態だから、味がどちらかわからない。
確率は50%。
銃の弾倉に半分弾が込められたロシアンルーレットだ。
私は引き金を引くように、甘噛みしていた中華まんを味わった。
甘い。甘かった。
あんまんだったのだ。
その瞬間、私の頭は銃で撃ち抜かれた。
確率50%のロシアンルーレットに敗北してしまったのだ。
私はあれほど肉まんだった口で、あんまんを咀嚼した。
そしてあんまんになった口で肉まんを食べた。
崎陽軒のシウマイ弁当のあんずを先に食べてしまったみたいな気分で。
あのあんずは私にとってスイーツだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます