第7話 非通知
仕事の最中に私物のスマホが鳴った。
近くに上司がいなかったので、誰からの電話か確かめずに出てしまい、
ふと画面を見ると『非通知』となっていた。
『非通知』の電話に出てしまった。
取り返しのつかないことをしてしまいました。
いきなり切って逆恨みされると困るので、「もしもし」と言ってみた。
「あつ、みさき? 私、吉岡玲奈だけど、電話番号変わったかもとか思って、非通知でかけたんだ」
吉岡玲奈。大学の時の友達の友達くらいの関係性。もう2、3年連絡もしてない。
「あ、そうなんだ。久しぶりー。ごめんね今、仕事中だから、折り返しかけ直すね」
「うん、わかったー」
私は電話を切ってから気付いた。
非通知の電話にはこちらからはかけられないのだ。
折り返しの出来ないことをしてしまいました。
私は休憩時間に、スマホの電話帳を見たが、吉岡玲奈という名前はなかった。
友達の友達という関係性。
LINEの友達にも、グループLINEにも名前はなかった。
取り返しのつかないことをしてしまいました。
でも本当に用があればまたかけてくると思った。
が、それから2度と吉岡玲奈から電話が来ることはなかった。
もう今では吉岡玲奈という子は存在しなかったと、私の中ではそうなっている。
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