vice-President of BABEL


 「バベル」の副大統領の執務室は万城目大統領の24時間起居する国連ビルの最上階にある特別室よりもさらに厳重に警備が敷かれている、B18の奥まった一角にあった。

 迷路のような入り組んだ回廊の、生体認証でしか通過できない沢山の関門を、副大統領は躊躇せずに踏破していった。…RPGのダンジョンのラスボスの部屋のように、部外者がそこに辿り着くのは容易でないであろう… 

 この”竜宮城の玉座”よろしき神秘の部屋の主は、その存在自体が最重要機密事項である極秘プロジェクト「バベル」の中心的人物として初期から陣頭指揮を執ってきた国連の超エリートだった。やり手で切れ者の、ハイスペックすぎてとても簡単に覚えられず、言い尽くすのも時間がかかるほど様々な、多彩華麗でエクセレントなキャリアを持つ女性…彼女の名は<イヴ・チャップマン>といった。

 

 世界のこれからの歴史の趨勢、人類の命運、地球の未来、それらのキャスティングボードを握っているともいえる「バベル計画」の成否は、この華奢だが魅力的な肢体と、神秘的な碧色の眼を持つ女性の手腕にかかっていた。


 イヴ・チャプマンは、「バベル」の全体像について、ちょうど極めて俊敏で機能的で優美な体躯や翼と 炯炯とした両眼の中に超絶的な視力を併せ持つ、”猛禽類”の姿をイメージしていた。

 機動性と情報収集能力…鷲や鷹のように縦横無尽に自在飛翔して、張り巡らせたレーダー網で、素早く事態や目標を見極め、ASAPに目的を達成する。鈍重な白豚や、膂力に頼るだけのひぐまをも餌食にする戦闘機ファントムのような、鳳凰か不死鳥かというような凄まじい潜在能力を秘めた頑強な鷹。


 彼女は卓越した右脳のイメージング能力を擁するgenuis でもあり、そうした具体的なイメージは天啓の閃きとして、ほぼ自動的に、奇跡のように虚空より舞い降りてくるのだった。

 

<続く>

 

   

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