第67話

「さ、奥様、教室へご案内します」


「え、教室?」


零さんがいなくなってゆっくりしていたところ、催促された。


「ここにはいろいろな教室があるんですよ?」


「へー面白そう」


ということで、案内してもらった。廊下から教室の雰囲気をうかがう。なんかみんな楽しそう。


「こういうのっていいですねぇ」


「そうでしょう?旦那様のクラスも見ますか?」


「はい!ぜひ!」


先生について行き、シーンとした空気のクラスで止まった。ここが零さんの教えてる茶道教室。零さんは静かにお茶を立てていた。家でもしたりするけども、なんか仕事モードだと違って見えた。そして、生徒さんには丁寧に、落ち着いた感じで教えている。

指導する零さんって見たことなかったな。


「さ、奥様、他のクラスも見ましょう」


ということで、私はいろいろなところを見てまわった。書道教室も普通にあったけど、零さんのほうが上手な気がした。というかどのクラスより零さんのクラスがいいと思った。

私ってば零さんびいきだな。


「あら、もうこんな時間。躑躅さんの授業は終わってしまったかも」


「え、そうなんですか?零さん今どこにいるんだろう」


と、事務室に戻ろうとしたところ、前から零さんが歩いてきた。


「あ!宝之華!どこに行っていたんですか?事務所にいなかったので…」


「すみません、躑躅さん。私が教室を案内していまして」


「教室見てまわってました〜」


「そうだったんですね」


「躑躅さん、すみません。奥様お借りしてしまって」


「…いえ、構いませんが」


「じゃー帰ろうか」


「そうですね…。では失礼しました」


「またいつでもいらして下さいね!」


「はーい!」


なんだか先生に好かれちゃったよ、私。

楽しい気分で零さんと帰る。


「あの、もう怒ってませんか?」


「はい?」


なんのこと?あ、昨日の?


「もー全然怒ってないよ」


「よかったです」


「ごめんね零さん。私子供で」


「僕も子供ですみません」


「零さんは大人です。だって仕事してる姿、なんか格好よかったし」


「え、見たんですか?」


「うん!」


「やめて下さい。そういうの、苦手です」


零さんはちょっと照れてるみたいだった。


「えー?いーじゃん!」


「じゃあ、宝之華は撮影を見られても平気でしょうか?」


「え、別に?」


「え、そ、それはすごいです」


零さんは驚いていた。そんなにすごいか?変なの。


私たちはお互いまだ知らないことがいっぱいだけど、徐々に知っていけたら、きっといい家族になれるんじゃないかなって思う。


面倒くさい私に付き合ってくれて、感謝してるよ?


言わないけど!

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