川中夫婦

第58話

「ほのかちゃん、髪伸びたね~」


田中さんに現在メイクしてもらっている。

確かにショートだから伸びたらなんか微妙になってきたな。


「これ、切るべきですか?」


「そーねぇ、旭川さん、どうかしら?」


近くでお茶を飲んでいた旭川さんに振る田中さんである。たぶん田中さん、メイクしかできないみたいで、髪のセットは旭川さんか餅月さんがいつもしているような気がした。


「そうだな、まだちょっと短いけど、ボブはどう?エクステつけてもいいかも」


「いいわーそれ!」


「え、私わかんないです」


「俺の知り合いの店紹介するから、そこでやってもらったらいいよ」


旭川さんから名刺をもらった。裏には地図が!すごーい。


「ここお値段高いですか?」


「大丈夫。会社が払ってくれるから、領収書もらってね」


やったー!

仕事終わりに早速その美容室へと行って、私はボブヘアーとなった。


「零さーん!見て見て!」


帰るなり零さんに報告する。


「え、何を?」


「もーわかんないの?髪だよー!」


「ああ、なにか違う…ような?」


なんだよそれ、絶対わかってないよ。零さんに言うのが間違いだったな。


次の日

萩原さんに驚かれた。


「その髪かわいいよ!似合うね!」


ふん!さすが萩原さん。零さんとは違うわ。


「お人形みたいだしカラコンとか入れたらどうでしょう」


「カラコン?」


「カラーコンタクトです」


「私、視力いいですけど?」


「いやいや、カラーコンタクトは目の色を変えるんだよ?」


「え、怖くないですか?」


「大丈夫。結構みんな入れたりしますから」


そう、なんだ。


「例えば?誰ですか?」


「下津さん。あの人もとは黒目だよ。あと田中さんも怪しい」


「えーそうなんですか!?」


知らなかったなー

ということで、私は撮影のときだけ、カラコン女になった。家ではしないけど。

そうやって撮影していると、なんだか仕事が増えた。雑誌も前より載るようになった。さすがプロの判断。

休みの日に、私がわりと大きく載った雑誌を零さんに見せる。


「これ、私だよ?どう?」


「え?これ?」


「うん」


「別人のようですね」


どういう意味?零さんに見せてもこんな反応しかしない。そんなのわかってるし。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る