第57話
次の日、仕事から帰るとアパートのドアの前でたたずむ川中先生と会った。
「どーも先生」
「なんだお前かよ」
「はー?なんだってどういうことですか?」
「零くんはいいやつなのに、お前はバカだな」
「は?昨日会ったばっかりなんですけど。決めつけないでください」
「零くんと朝しゃべったし。あいつはよく話聞いてくれるんだよ。お前はわがままばっか」
「は?川中先生は碧唯さんのパシリのくせに!」
「は?パシリじゃねーし、ふざけんな」
川中先生は自分のバックに手を入れ、さっきからがさごそしている。
「何してんですか?」
「うるせーよ」
と言いながら、何か探してる。
「カギ見つかんないとか?」
「うるせー黙れ」
って言ってまだ探してる。見つかんないんだけど認めないってわけ?
「てゆーか川中先生、全然いけてないのにーなんで碧唯さんが選んでくれたんですか?パシリだから?」
「お前ほんと常識ないな」
カギを探していると思われる川中先生は私を全く見ないで話す。常識ないのそっちじゃん!
「ねーいつまで探してんですか?」
「うっせえ」
「看護師さんなのに口悪いですよ?いいんですかそんなんで?」
「お前と話してるとイライラするんですけど。さっさと中入れよ」
だって、あさってるの気になるし。私までムッとしちゃうしー。
「どうされたんですか?」
声の方向には零さんが。
「おかえりー」
「おい!零くん!こいつひどいんだけど!」
「なにか失礼なことを?」
「失礼すぎ。ちゃんと教育しとけ」
「な!そこまで言わなくていいじゃないですか!」
「黙れよ」
「もう!」
川中先生はまたバックをあさり始めた。
「あの、カギをお探しですか?」
あー零さん言っちゃったよ。怒るよこれ。うっせー黙れとか?
「そうなんだよ」
は?私と態度違くない?
「見つからないのでしたら、碧唯さんが来るまでうちにいてはどうでしょうか?」
「おーまじで?悪いね」
「ちょっと!だめです。散らかってるし!」
「そうですね…」
零さんは考えこんだ。よっしゃ、やっぱりすみませんって言って川中先生をいじめちゃえ!
「いいよ、俺玄関に座らせてもらうだけで」
「そうですか?ではどうぞ」
おい、零さん。すんなり家に入れちゃったよ。
そんで、川中先生は座るとすぐに、
「零くん、聞いてくれよ」
なにそれー。
「はい、どうされましたか?」
零さんも座っちゃったし。面倒な人達。
私は無視して部屋の片づけをする。零さんにさせたい、とゆうかさせないといけないのに川中先生に掴まってしまってるし。
「碧唯さ~いつもパスタばっか作らせんだよ」
「川中先生は料理をされるのですね」
「一応な、細川ほどではないけど」
「パスタがお好きなんですね」
「そう、凝り性でさ。俺と一緒の病院で働いてる時なんかさ、毎日食堂に行って違うメニュー食べんの。制覇したいって言ってね。でもメニュー変わったりするわけじゃん、だから結局弁当持っていかないわけ。俺はさ、作ってもらいたいなーって思ってたんだけどさ」
うざい、長い。そして悲しみを零さんに打ち明けている。どうしてほしいんだよ全く!
「そうなんですね」
零さんの返事はいたって短い。ほんとに聞いてんのか?
「俺、パスタばっか食ってたらやばくね?」
「三食、でしょうか?」
「いや、一食分だけだ」
「では、よろしいのでは」
「そうだな、考えすぎだよな」
零さん特になにもアドバイスしてないんだけど。一方的に川中先生がしゃべりまくってるだけじゃーん。
「ああ、そういえば、細川先生とご友人ということでしたが…」
零さんは話に飽きて話題を変えてしまったみたい。うける。
「そう、中学からの」
「それで、
「は?
「そうなんですね。ご本人もおっしゃっていました。なぜ仲良くしないのですか?」
「桃川とか無理。あんなブスまじありえない」
「そうなんですか?」
「あのー!」
私は耐え切れなくなって、玄関まで行っていた。
「なんだよ、いたのかよ」
「ブスって川中先生はどうなんですか?」
「うっとうしいなお前」
「それってひどくないですか?細川先生に失礼ですよ?」
「細川の趣味は悪いんだよ」
「ひっどい!ねー零さん」
「確かに趣味は悪いと思いますが」
零さんひどいよそれ。便乗しちゃってるよ?気付いてない?
微妙な雰囲気の時、勢いよくドアが開けられた。
「しーちゃん、なにしてんの?」
それはこっちのセリフです!碧唯さんはなんのためらいもなく、家の玄関のドアを開けたんだから。
「カギ、どこやったかわかんなくて」
「うっそ、私もなのよー」
えー。2人ともバカなの?
「それ、ありえなくないですか?」
「あら?そうかしら。ちょっと失礼」
え、
碧唯さんは自分の持ってたバックの中身をいきなり玄関にぶちまいた。
「あーー!あった!」
大量の紙とか小物とかなんでもぶちまいてぐちゃぐちゃだ。カギはあったみたいだけど、この荷物だれが拾うんだろう。
「しーちゃん、零くん、拾って」
「うん」
零さんも近くにいたからなぜかパシられてるよ。
「あのーいつもしーちゃんって呼ぶんですか?」
暇だったので、立っていた碧唯さんに聞いてみた。
「うっせーよ」
荷物拾わされてる川中先生が言っても怖くないもん。それにー、川中先生には聞いてないもん。
「あら悪いかしら?零くんのあだ名はないの?」
「ないですよ」
拾わされている零さんは普通に答える。私に質問したと思うんだけど?そんで、その荷物碧唯さんのなのにね。
「じゃあ私がつけてあげよっか?」
「けっこうです!零さんのあだ名とかいらないんでー」
「あら~何怒ってるの?焼きもち?」
「違います!」
「大丈夫。私そんなつもり全然ないから~」
「ど、どんなつもりですか!」
「浮気?不倫?」
「はぁ?!ふざけないでください!」
「やだーそんなつもりないってさっき言ったのにー。もう忘れた?」
「なんですかそれ!」
「やだー宝之華ちゃんが怒った~」
くっそーガキ扱いされたー。
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