第27話

家は、家賃の安いところで、ボロアパートである。昨日来たばかりだから、まだ荷物も片付いてないし、近所に挨拶にも行ってない。なにからしよう?


「とりあえず…挨拶まわりに行きましょう」


「はーい」


零さんの決断により、うちの近くの部屋に挨拶に行くことに。粗品は洗濯洗剤である。最後に隣の部屋に行くと…


「隣に引っ越して参りました、躑躅と申します」


律儀な零さんのご挨拶。私も一緒にぺこりとする。


「わー若くてかわいいねぇ。うち上がってく?」


というように、とても陽気な小柄の女性に誘われた。


「いえ、ご迷惑をかけるわけにはいきませんので…」


「着物男子なんだね。どんな仕事してるの?」


「書道家です」


「まじ?かっけー。ま、上がってお茶でも飲みなよ。彼女もね」


「あの、私…一応妻なんですけど!」


「そーなの?新婚さん?」


「そうですね」


零さんは普通に答える。なんでそんなに落ち着いてんの?


「ひゅー!ますます話し聞きたい!上がって!」


結局、部屋に上がることになった。

その部屋は整頓されていて、綺麗だった。コタツに案内され座る。そこには、お子さんもいた。


「うちの子の、柚華ゆずか桃華ももかだよ~」


「はじめまして、こんにちはー!」


元気なお子様。保育園とか行ってそう。


「あなたのお名前を教えて頂けますか?」


さすが、零さん丁寧だ。そしてナンパのようにも感じる。


「あー忘れてた。細川杏ほそかわあんずです。よろしくー。んで?君ら名前なんだったっけ?」


「躑躅零と申します」


「わ、私は宝之華です」


「ふーん。躑躅って花のツツジの漢字?」


「そうです」


「珍しいねー」


「はい」


漢字の話とか。頭いいのか?この人。


「ただいま…」


ふいに、玄関から声がした。


「え、旦那さんですか?」


「そーだね。ちょうどよかった!ねー将希まさき!お客さんいるよー!」


「いや分かるし!靴で」


部屋に入ってきたのは、身長はないけどイケメンってゆーの?かっこいい感じでスーツをビシッと決めた男性だった。大変失礼だが、奥様はあんまり美人じゃないから意外な顔だった。


「お前ら誰?」


え、目つき悪い!そして口悪い!


「お隣に引っ越して来た人だよー!躑躅零くんと宝之華ちゃん!」


「はじめまして…」


目線が怖い。なんかわかんないけど圧力を感じる。


「2人は新婚さんなんだってー!」


「ふーん。なんでお前着物?」


え、つっこみ!いや、つっこみたくなるか。


「あ、私、書道家でして。普段着物を着ております」


「敬語なんだ。で?こっちのギャルは?なんか仕事してんの?」


ひゃ怖い!そして私はギャルなのか。


「あー、それ今から聞くとこー。将希座りなよ!」


奥様に質問を制止された。


「あ、うん。それより…お茶くらい出せって。ちょっと待っとけよ」


なんでか旦那様が動いた。

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