第10話

「おい、零くん佐賀連れてきたぞ!」


「あの!柊先生、客って誰なんですか」


「……あれがお姉さん?」


驚いた…。宝之華と違って背が低いし、顔も柊先生の言う通り全然似てない。


「…うげ。なんで宝之華」


「ちょ!あんたねぇ!金払えよ!おばあちゃんに私がいくら払ってるか知ってんのかよ!まじいい加減にしろ」


「別に。月2万でしょ?」


「ふざけんなよ!私10万も払ってんですけど!あんたが払ったことになってんだけど!!」


「なにそれ。バカじゃないの?」


「こんのバカやろ~!金払え!」


「払ってるわよ!」


「早く入金しろ!」


動物病院の中でする話じゃないような…。


「おい佐賀。外で話せ。お前もな」


柊先生が二人を外へ追い出した。あ、僕はどうすれば…。


「柊先生、あの…」


「あの子、零くんの新しい彼女?」


「え?ま、まさか…。15歳ですよ?」


「え。若いな。でも別によくね?」


「そんな…何をおっしゃってるのか…」


「いいと思うけどな…。ま、あとは零くん次第?」


「え…」


そんな話をしていたら二人は外から帰ってきた。


「零さん、話はつきました。おばあちゃんに電話したんで!」


イライラしてるけど…ほんとに大丈夫だろうか?


「佐賀さん、妹にも迷惑かけるなんて最低だな」


「柊先生、うるさいですよ」


「てゆーか佐賀さん、マジで似てない。てゆーか並ぶとブサイクさが際立つな…」


「柊先生、いい加減にして下さい」


あらら…柊先生言い過ぎですね。でも、とりあえず問題が解決したようでよかったです。


「零さん、私福岡帰ります。学校あるし」


「あ、僕も帰ります。柊先生ありがとうございました」


「ああ、別にいいけど」


また二人で新幹線に乗った。母の個展の手伝いはまるでできなかったのですが…。


「ところで零さん、なんで獣医さん知ってたんですか?」


しまった…。でも、言わずにはいられない。


「実は、彼女が犬を飼っていまして、よく付き添いで動物病院に行っていたんです」


「へー。名前覚えられるほど行ったんですね」


「そうですね。でも、彼女は足助あすけ先生に会いに行っていたようなものですが」


「そうだったんですね…なんかすみません!」


「いえ。彼女のことはもうどうでもいいんです」


「え、吹っ切れたんですか?よかったですね」


僕は、敬語を使わないように我慢して話したり、いつも気を使っているよりも、気ままに話せる彼女に今は惹かれている気がした。

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