第5話

次の日。


「お、佐賀ちゃん」


「どうも~ってなんか零さんが暗いんですけど」


「実のやつが、元カノの話ししやがって」


「へぇ、実さんの?」


「いや?躑躅の」


「え~彼女いたんだ~」


「だろ?あいつひどいよな?俺知らなかったんだぜ?」


「零くん、やっぱりまもるお兄ちゃんには勝てないよ」


「…。」


梢くんを無視した実くんが、さらに余計なことを言ったが、僕は何も考えられずぼーっとしていた。


「…なんで零さんみたいないい人が別れちゃったんですか?」


「それはね!零くんの元カノって年上だったんだけど~零くんのことを男だと思えないんだって!」


「ま、躑躅の近所の姉ちゃんみたいな人だったらしいぜ?」


「そんで?零さんは振られてしまったんですか?」


「あんまりはっきり言うと零くんへこんじゃうよ~」


実くんのその言葉で余計にへこんでしまった。


「零さんいつ別れちゃったんですか?」


「最近かな?青森に零くん前住んでて~元カノも青森にまだいるんだよ」


「遠距離でダメになっちゃった感じも考えてられますね」


「でも、森田さんは守お兄ちゃんが好きなんだよ!」


あれ…今普通に名前が出なかった?


「あの、実くん名前出さないでほしいのですが」


「ごめーん!」


「あのー守お兄ちゃんって誰ですか?」


興味深そうに尋ねる宝之華さん。どう説明すれば…


「俺の親戚!青森で獣医してんだ。かっこいいんだよ?」


え…かっこいいという説明は必要なのだろうか?


「へぇ~それで森田さんと付き合ってるんですか?」


「いや、守お兄ちゃん振ったらしいよー」


「じゃあ森田さんフリーじゃないですか」


「だね~でも零くんじゃ無理ってことかな?」


「…そう…ですね」


つい呟いてしまっていた。


「…零さんすみません。つい、いろいろ聞いちゃいました!」


「構いませんよ。過去の話なので…」


「零くん引きずるねぇ~可哀想!」


「実が変なこと言うのが悪くね?」


そうですよね、梢くん。


「いーの!けじめ大事だよね!」


実くん…けじめって…。

…そうだ。


「…そういえば実くん、高原たかはらさんのことはどう考えていますか?」


「零くん!何言ってんだよ!」


動揺する実くん。高原さんというのは、実くんの幼なじみで憧れの女の子らしい。前話してくれてたのを思い出した。


「え?それはー?誰ですか?」


興味深気な宝之華さん。


「お前っ!みかこがいるのに不倫か!?」


動揺する梢くん。申し訳ない。


「ちち違う!零くん!違うの!違うって!」


二人とも、互いをいじって話すことは、日常茶飯事であった。

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