第2話・【偽りの鬼の町】

 シュテン号鬼面獣列車は、目的地の鉱山駅に到着した。

 駅には、先に到着した司法列車が停車していた。

 駅から駅前広場に出てきた、爆殺人一行は華やかな雰囲気の町を眺める。

 金の鉱山で栄えている町には、三角形の色鮮やかな旗が吊り下げられ、町には鬼人々の笑い声や、軽快な音楽が演奏されていた。

 思わずカスタネットを鳴らしながら、ニッケル嬢が言った。

「とても、悪党が潜んでいる町には、見えないわね」

 キッスが言った。

「町には表と裏の顔がある……とりあえず、酒場にでも行って情報収集でもするか……政府から依頼された、ターゲットの名前はわかっているから」


 キッスたちは大通りの酒場に入る、一瞬でよそ者を見た酒場の雰囲気が変わる。

 カウンター席に座ったキッスに、無愛想な鬼娘が注文を取る。

「食べるの? 飲むの?」

「食事をしたい、今日のおすすめ料理は?」

「店の裏で今朝、生ゴミを漁っていた『砂漠八つ目鬼ドラゴン』のソテー」

「それでいい、人数分くれ」 


 厨房で鬼の主人が調理をはじめたのを、カウンター席から眺めながら。キッスは無愛想な鬼娘に質問する。

「この町のどこに行けば、コロラド一家の『コロラド・アイト』は居るかな?」

 直後、厨房から飛んできたフライパンを、キッスは軽く首を横に倒して避ける。

 厨房からドカドカと出てきた、腰に調理エプロンをした鬼の大男が怒鳴る。

「よそ者が、コロラドさんに何の用だ! コロラドさんは、この町の名士だ! 近々市長にも立候補する、この町はコロラドさんが所有している鉱山で発展している! さっきも左右非対称のクワガタ角の雇われ保安官の男が、コロラドさんのコトを嗅ぎ回っていた!」


 鬼の店主は、二個目のフライパンをキッスに向かって投げつける、近くにいたバッファローが飛んできたフライパンを受け止めた。

「コロラドさんを悪党呼ばわりする、よそ者は店から出ていけ!」

 店内の客たちも「この町から、出ていけ!」の罵声をキッスたちに浴びせる。

〔人滅の血刃〕『邪狩流』は、静かに店を出た。


 歩きながら、店からくすねてきた酒を仰ぎ飲みながら、ニッケル嬢が言った。

「どうやら、この町を牛耳る悪党に、ほとんどの町の人が洗脳されているわね……この薄い酒! 水増しされている」

 大通りから入った狭い路地道には、貧困層な人々が座り込んでいる……ルチルが一人の座り込んでいる老人鬼と、何やらの会話をしてから、キッスたちの所にもどってきた。

 歩いているキッス一行に、声をかけてきた人物がいた。

「旅の方、今夜の宿は決まっていますか? まだなら、うちの宿はどうですか? お安くしておきますよ」

 額に一本角を生やした、少女は周囲の様子をうかがいながら小声で言った。

「晴らせぬ恨みを晴らす、爆殺人の方ですよね……お願いします、おっとうと、おっかぁの恨みを晴らしてください」


 少女に案内された宿に来た、キッスたちに鬼の少女が言った。

「おっとうは、コロラド一家のカジノで騙されて莫大な借金を背負わされて、命を絶てば命の金が家族に入ると言われて……自殺させられました、おっとうの命の金は結局コロラド一家の元に……えっかぁ、は鉱山で朝から晩まで働かされて過労で倒れ……おっかぁまでも、あいつは鬼の皮を被った人です!」


 ルチルが言った。

「路地道に座っていた老人から聞きました、コロラド一家は鬼の角を付けた人間で、鉱山の中に屋敷を造って住んでいると……人滅するのはボスを含むコロラド一家五名……ボスのコロラド・アイト、高利貸しで命の金銭契約をそそのかす者、鉱山で女子供を強制労働させているムチ使い、そのムチ使いの手下の二人」 


 ニッケルがキッスに訊ねる。

「いつ、人滅する?」

「今夜、赤い三日月の夜に」

 バッファローがロウソクの炎を吹き消して、部屋は闇に包まれた。

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