新大陸〔異界大陸国レザリムス〕

楠本恵士

新大陸──鬼人国政府公認爆殺人

第1話 ・〔人滅の血刃〕チーム【邪狩流】大陸横断鉄道

 異界大陸国レザリムス【新大陸】──蒸気機関文明が発達した、鬼人の特異な世界。


「ふぁ~っ、どこまで行っても代わり映えのしない荒野風景……退屈、日本刀と拳銃ガンの手入れは終わっちゃったし……退屈」


 大陸を横断する幹線鉄道から支線が、葉っぱの葉脈のように広がっている。

 その鉄道を走る、鬼人国政府公認の個人所有の蒸気列車【鬼面獣号〔別名・シュテン号〕】に乗っている。

 シュテン号は、変形すると車両の両側から鋭い刃物が突出して、悪党を寸断する。


 カウガール姿の美女、 腰に日本刀と拳銃を提げて、額の両脇に蛾の触角のようにも見える炎型の鬼角を生やした。


 政府公認の爆殺人〔人滅の血刃〕チーム【邪狩流ジャカル】のリーダー『オニ・キッス』は、もう一度大きなアクビをした。

「仕事の依頼が来ないと、行き先が決まらない……ふぁ~っ」


 オニ・キッスの近くのテーブル座席に座る。はりのような細い角を額の両側に二本生やした、酒場の踊り子風の褐色肌の鬼女『ニッケル嬢』が、爪を磨きながら言った。

「依頼がないって言うのは平和で結構だけれど……それでも爆殺料が入らないと、干上がっちまうね……酒も残り少なくなってきたから、次の駅で補充しないと」


 ニッケル嬢から少し離れたテーブル座席に座る、東洋人風な童顔で、額にドリル一本角を生やした小柄な武闘鬼青年『ルチル・チル』は、レザリムスの東方地域に伝わる、木製の易学札を引っくり返して何かを占っている。


 車両のドアが開き、前方の寝台車両で仮眠をしていた。

 鳥の羽飾りを頭に付けて、バッファロー角を生やした大柄のネイティブアメリカン風の大男『クロム・バッファロー』が歩いてきて言った。

「眠ったら腹が減った、食堂車に行って何か食べてくる」

 そう言ってバッファローは、後方の食堂車へ入っていった。


 その時、開いていた窓から機械仕掛けの小鳥が飛び込んできて、キッスはからくり鳥から手紙を受け取った。

 手紙を読んだキッスが言った。

「行き先が決まった」

 路線図をテーブルの上に広げたキッスは、列車の壁に付いている伝声管でんせいかんを通して、先頭の機関車両に行き先を伝える。

「次の支線を左に」


 分岐ポイントが切り替わり、シュテン号は別の路線に入った。

 車窓を眺めていたニッケル嬢が言った。

「リーダー、またいつもの保安官が現れたよ」

 窓の外に目を向けると、シュテン号と並走する上半身が鬼人下半身が馬の鬼人人馬鬼タウルスの愛馬『スピネ・ルル』に乗った、男の鬼人雇われ保安官がいた。

 左右非対称のクワガタ角を生やし、幅が広いウロコ状のジーンズカバーを装着している『プレーン・ナイト』が、シュテン号と並走しながら言った。


「鬼人国政府からの依頼は、オレたち『司法列車』の方にも届いている、悪いが極悪人を法で裁かせてもらう」

 並走するプレーン・ナイトの向こう側を平行する路線に、シュテン号の二倍の大きさがある、司法列車が追走してきてシュテン号を追い越していく。

 車両には司法局の紋章……ある車両の格子窓から、赤い服を着た女性裁判官『シンシャ辰砂』が、キッスたちに向かって微笑む。

 司法列車の最後尾車両には、小山のような巨大な車両が連結されていた。

 ニッケル嬢がキッスに質問する。

「最後尾の車両が例の?」

 キッスは無言でうなづいた。

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