第18話 アラサーウィンクの破壊力はそれなりだっ
「随分と多くないかな? 君が絶対にゾンビを殺さないというのなら、汚れ仕事はこちらが引き受けることになるわけだ」
「だからこその最前線です。
相手を殺さなくてもワタシなら無力化することはできますし、一番危険にさらされるならそれぐらいの報酬があってもいいんじゃないですか?
この条件を受け入れてくれないなら、ワタシは協力しません」
「なるほど……。だとしても二割はいくらなんでも量が多すぎるね。訓練場にいる人は街から逃げてきた人や教授達を含めて六〇名を軽く超える。
君達三人のために二割は、いくらなんでも残った人に死ねと言っているようなものだよ?」
「む……。わかりました。食料は、一割でどうでしょう」
「まだ多い。人数の割合に対して、要求が破格すぎると思うんだけど?」
「二人とも、ちょっと待ってほしいのじゃ。
人の数で言えば、わしが原因調査をするにあたって協力者を募りたいと思っておる。
生徒会長殿達からしたら戦力の低下というデメリットはあるが、口減らしというメリットもあると思うのじゃ。
その上で、食料の一割であれば人数に寄るとはいえ、食料事情への負担が減ると思うのじゃがの」
「協力者か……。僕一人で判断できる裁量を超えて来た。
一度教授達と話をさせてほしい。
食料については、五パーセントは約束できるよう相談してくるよ」
そう言って、生徒会長殿は先ほどまで会議をしていた場所へと戻っていった。
「ミアル! お主どういうつもりじゃ!?」
「あはは。ごめんごめん。
んとね、ユッコちゃんは自分が天才美少女だーなんて言ってるけど、本当は努力の人だってワタシは知ってる。
半年間ずっと一緒だったし。
そんなユッコちゃんが原因を突き止めるって言うなら、きっとできると思うんだ。
だから、ワタシはユッコちゃんのため、っていうより、みんなのために頑張ろうかなって。
だからさ、ちょっとはワタシに頑張らせてよ?」
「ミアル……。ありがとうなのじゃ……」
教授らと生徒会長殿の会議が終わるまでの間、わしは再度リストに目を通し、いくつかの質問をリーリアに行っていた。
そして、教授らの会議が終わると、生徒会長殿ではなく、なんとヒリア教授がわしの所へやってきた。
「ミアル! ユッコちゃん! あなた達どういうつもりなの!?」
「ヒ、ヒリア教授……。あ、あのじゃな……」
「あ、えっと、その……」
わしもミアルもヒリア教授には頭が上がらんのよな……。
色々迷惑をかけておるし、ナナイと同じくすっごく面倒を見れくれるし……。
「まぁ気持ちはわからなくないのよね。
私も今回の方針には反対してたし。
ゾンビになっちゃった生徒を戻せる可能性もゼロじゃないもんね。
だから、私もあなた達について行くことにしたわっ!」
「な、なんじゃとー!?」
「どうせウチの研究室に行くんでしょ? だったら責任者も行かないと、ね?」
小首をかしげてウィンクをしながらヒリア教授はそう言った。
たしかアラサーだったはずじゃが、かわいらしいと思ってしまったの。
いや、そんなことはどうでもよい。
「ユッコちゃんは百歩譲っていいとしても、ミアル!
いくら強いからってあなたなんであんなこと言ったの!」
「いや、だって、ワタシがゾンビを無力化できれば、最低限しか殺さないで済むかなって……」
「そんなの大人に任せればいいのよ! 教授陣はなるべく多くの人を守れるように頭をひねらせているわ。
あのエンジ教授だって、態度こそアレだけど、みんなのことをちゃんと考えて今回の作戦にも参加する。
確かにこちらから協力をお願いしたけど、最前線で戦うことを条件に交渉するなんて!」
「ごめんなさい……。でも、ワタシはワタシができると思うことをやりたいんです」
「……。はぁ。あなた達って本当に頑固よね。
いいわ。私も作戦には参加するから、あなたのサポートに回るわ。
研究室に戻ったら、何かする時は必ず私に相談してからにしてよね!」
「「はい。すいません」」
わしとミアルは声をハモらせてヒリア教授に謝るのであった。
食料確保の作戦を実行することを、教授連中は訓練場にいる全員に通達をした。
決行日は明日。
参加するメンバーはエンジ教授、ヒリア教授をはじめとした教授陣から四人。
生徒会から生徒会長殿と他二人。
ミアルの名は告げられなかったが、今訓練場にいる生徒の中から一部の生徒に参加を依頼することが告げられた。
当然、危険な作戦であるから生徒達の一部で悲鳴に似た声が上がっていたが、概ね理解を得られておった。
生徒へは生徒会から協力依頼をするそうだ。
あまりに大所帯で行動すると逆に見つかるリスクが高まって危険じゃろうから、ミアルを除けば多くて二、三名といった所じゃろうか。
既に陽は傾き始めているから決行は明日になるんじゃろう。
今日は明日に向けて、作戦を練ることになるようじゃな。
一つ心配なのは、昼頃からみんなここに集められているから、満足に食事ができていないことじゃ。
それが明日の作戦に悪影響を及ぼさなければ良いのじゃが。
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