第13話 空中散歩
「めっちゃ怖いぞよ!? <ロック> でもすごいのじゃ!」
「ひ、ひぃぃい!? <ウォール>」
「<ロック>」
「気ーがー散ーるー!」
「仕方なかろう? こんな経験っ <ロック> など、普通なら人生で一度もないじゃろう!」
「足踏み外してもしらないからねー!?」
わし、ミアル、リーリアは空の旅をおっかなびっくりに楽しんでおる。
短いフライトではあるが、ミアルを中心にリーリアおんぶをされ、わしは抱っこされている形じゃ。
ウォールを発現した場所にロックで約二秒だけ落下もせず空間に固定することで、重量に逆らった石の上をミアルが飛び移るというやり方で。
離れた場所にウォールを発現させ、ロックで固定するということが実現性に乏しかったため、今まさにおんぶにだっこ状態で空中を移動しているわけである。
もちろん、ロックの効果が切れれば石は落下するので、マネをする時は下の人がいないことを確認するのじゃぞ!
ミアル発案のこの方法は、予想以上に上手くいった。
身体強化魔法と元々の驚異的な運動能力でミアルがジャンプしている間に、わしとリーリアでミアルの足元にウォールとロックを発動し、足場を作るのだ。
ミアルは変に足場を意識しなくてよいし、わしらも魔法を発動させる場所が決まっているので、思った以上にスムーズにいった。
「とーちゃくー」
「うむ、さすがミアルなのじゃ」
「私、もう二度とこんな目に会いたくない……」
「リーリアは大げさじゃな。
怖くはあったが、ミアルならわしらを落とすことなど絶対にないと思うんじゃがの?」
「ん~、ユッコちゃんの信頼が気持ちい~ね~」
「な、なんじゃ! し、信頼とかじゃないんじゃ!! まぁよいわ。
ふぅ~」
わしは地面に降り、一息ついて体をほぐす。
なんだか言っても、結構緊張はしていたのじゃな。
リーリアは少し調子が悪そうじゃった。
どうにも胸が苦しく、頭痛がするんだそうな。
魔力を使いすぎれば、体調が悪くなることは多々あるが、リーリアの魔力量であればさほど使ったようには思えないのじゃが……。
念のため、常時持ち歩いている魔力回復薬を飲ませた。
すると、すっかりと気分がよくなったようであった。
どうにも、嫌な感じがするの。
魔法を使った後に苦しい、というのが気になる。
魔法を使った後に、おかしくなったという話をどこかで聞いたような……。
あ! リーリアと一緒に隔離されていた生徒じゃ!!
確か、縄を解こうとずっと魔法を使っていたら発作が起こったと言うておった!
推論とも言えない思いつきじゃが、魔力の消耗によって発症が高まる可能性があるのではないか!?
今思いついた内容を二人に伝え、リーリアにはこれからなるべく魔法を使わないように告げる。
思いつきレベルじゃし、サンプルがほしいの。
今まで発症した人達の魔力量と発症時間をまとめることができれば、一定の因果関係を導き出せるのではないか?
まぁ学院だけではサンプルは少なすぎるが、発症の可能性を少しでも下げられるなら全て試しておきたいの。
訓練場にいる連中が、発症した人達のことを覚えておれば良いのじゃが、さすがに高望みしすぎかの。
訓練場の中に進むのはミアル一人じゃ。
先行して、話し合いの場を設けてもらうためじゃな。
リーリアは既に噛まれているから、中に無断で入ったらどんな目に合うかわからん。
わしは噛まれていないが、回復魔法で傷を癒すことができる以上、立証することはできぬ。
ミアルも同様じゃが、昼に集まった時には平気であったことをクラスメイト達は知っておろうし、その強さも知られている。
ミアルであれば、噛まれていないことも信じてもらいやすいと思ってのことじゃ。
訓練場に来た目的は情報収集である。
見張り台まで登ったことで安全が確保されたゆえ、三人一緒に入る必要はなくなった。
が、ミアル一人に情報収集をまかせるのはちと不安である。
じゃから、ミアルにはわしらを話し合いの場に入れてもらうよう交渉をしてもらおうと考えたのじゃ。
「私は入れてもらえないかもしれないけど、ここなら安全そうだし気にしなくていいよ」
「切なそうな顔でそんな事を言われてもの。できるだけ一緒にいられるよう交渉じゃ。
何にせよ、情報収集が目的じゃし、ここに向こうの代表が来てくれるでも問題ないがの。
ただ、水と食料を確保しているようであれば、分けて貰えるように交渉せねばならん」
ミアルには交渉のカードを先に見せておくため、紙にまとめておいた。
まず提示する内容は、ゾンビもどきが生者であること。
これは訓練場にいる人らも気づいておるかもしれぬが、生命維持活動と回復魔法が有効であることを伝える。
回復魔法が有効であることを伝え、わしにやましいことはないと思ってもらえないかという打算もある。
逆に、疑われてしまう可能性も十分あるが。
話し合いの場を訓練場の中に用意してもらえた場合には、追加で情報を提供することも書いておく。
ゾンビが反応する条件、推論ではあるが発症する要因に心当たりがあること、じゃな。
推論にはついては、サンプルがほしいから協力を求めることも書いておく。
これなら余程内部で揉めておらぬ限り、興味を示すであろう。
他にも訓練場に入れてもらえるなら、わしの身体検査をしてもらうこと。
既に噛まれているリーリアは、見張りと異変が起こった場合にはミアルが責任を持って対処することを約束する。
こんな所じゃろうか。
さて、どんな対応をしてくるかの?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます