第8話パーティーのバランス力が上がった!
わしはリーリアの体を色々と調べさせてもらった。
結果は、先程ゾンビもどきを調べた時とほとんど変わらなかった。。
つまりゾンビもどきも、噛まれたリーリアも、普通の人間とあまりかわらない身体反応しか示さないのじゃ。
若干の差異は、ゾンビもどきの方がやや様々な反応というか生命維持活動が弱いくらいじゃろうか。
他に気づいたことは発症までの時間に大きく差があることじゃな。
ゾンビもどきに噛まれた多くの生徒は昼くらいまでには発症しておった。
にも関わらず、この教室に隔離されていた二名の生徒は発症まで二時間以上は発症が遅く、リーリアに至っては発症していない。
なんらかの要因によって、発症までに大きな個人差がある可能性が出てきたの。
個人差の他にもリーリアの話から二つ、新たな可能性が出てきた。
何度も噛まれたり、噛まれ続けると、感染から発症までの時間が短くなる可能性があること。
一度くらいなら噛まれても人によっては感染しない可能性があること。
感染しない可能性については長期間潜伏するケースがあるのかもしれんし、リーリアが発症するかどうか経過観察するしかあるまい。
「ふぅむ、浄化魔法も試してみたいのじゃが、リーリアも浄化魔法は使えなかったはずじゃな?」
「うん。私は火魔法がメインで土魔法と風魔法をちょっと使えるだけだよ」
ミアルは身体強化のみしか使えないのは把握済みである。
「やはり、訓練場に行って情報収集と浄化魔法をリーリアに掛けてもらって、結果を確認したいの」
「ん、オッケー。移動はワタシ、リーリア、ユッコちゃんの順番かな」
「うむ。っとミアルよ、武器はどうしたのじゃ?」
「あ、さっきの戦闘で折れちゃった」
「マジじゃ?」
「マジマジ」
「どうするのじゃぁああ!? 教室には長くて武器になりそうなものなんて無さそうじゃぞ!?」
「ま、まぁ、リーリアもいるし、なんとかなるんじゃないかなぁ、なんて?」
「火魔法で援護はできるけどさすがに人に向かって使うのはちょっと……」
「縛られておる友人を当てにするとは、なかなか酷だと思うのじゃが……。
まぁないものは仕方ない……。慎重に進むしかなかろう」
「ユッコちゃん、もうそればっか~」
「お主が武器を壊すからじゃろ! 本館に入った時も油断しおってぇ!」
結局、教室を見回して武器になりそうなものはなかった。
いつまでも教室におっても始まらないので、わしらは訓練場へ向かうことにする。
「ルートの確認じゃ。今は本館の研究棟よりの教室におる。
訓練場へ中央階段を通って一階におり、そこから訓練場への連絡通路を目指すのじゃ!」
「ユッコちゃん、急に大きな声だしてどうしたの?」
「そ、そんなことないのじゃ! 二人がちゃんと理解できるようにじゃ!」
「なんでそのルートなの? 研究棟側にも、訓練場側にも階段があるじゃない?
その場その場で判断した方がいいんじゃない?」
「リーリアの言うことも一理あるがの。
わしとしては一階での逃げ道を確保しておきたいのじゃ。
実証はできていないんじゃが、ゾンビは階段の上り下りができないと考えておる。
じゃから、一階がゾンビだらけで進めなかったとしても、一階の情報を得られて二階に逃げて建て直しもできると思っての」
「なるほど~。了解だよ」
しかしあれじゃな、やつらの呼び名がとってもむず痒い。
死霊術師的にはアレがゾンビでないのは確定的明らかなんじゃが、他の人たちからしたらゾンビと変わらんじゃろうし。
ゾンビと呼びたくはないのじゃが、他に端的な呼び方が思いつかん。
ゾンビもどきと呼びたいのじゃが、他の人からしたらどっちでもいいことじゃろうし……。
気分的にはすごい嫌なんじゃが、ゾンビと呼ぶしかないのかのぅ。
「それじゃ、今度こそ訓練場にレッツゴー!」
ミアルを先頭に教室を出る。
「あれ? この人達って私がさっき吹き飛ばした人達だよね? なんで気を失ってるんだろ?」
教室の外で、三人の学生が倒れておった。
「ホントウジャー。ナニガアッタンジャロウナー?」
「なんで棒読み?」
「そ、そんなことないのじゃ?」
「なんで疑問形?」
ミアル、リーリアの連携による質問を華麗にスルーする。
多分、さっき発動した死霊術のおかげなんじゃと思うが、まぁ二人には言えん。
再出発からさっそくひと悶着じゃが、わしらは教室を後にした。
ゾンビもどきが何であるかはまったくわからん。
友人であるリーリアをなんとか助けてやりたい。
そして、こんなことをもし人為的に誰かが引き起こしているのだとしたら、到底許せるものではない。
人道的に、そして死霊術師への風評被害的に。
それと、同時に考えてしまう。
ゾンビもどきに起こっている事象が、生者と死者の狭間なのだとしたら。
それはわしの研究に、本当の目的に役立つのではないだろうか……?
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