第34話 サキュバスは女に取り憑いて男を求め続ける

 陵の豊富な精エネルギーを得ていたサキュバス姉妹を蹴りを入れて、泣かせてしまった俺はメルに彼女らの処遇を聞いていたのだが…。



「この子たち、元の世界に帰れないのかな?力が弱まっているから、こっちの世界を迷子になっただけっぽいし、私は陵くんに手を出せないなら、海に沈める事はしないし、泣くし、面倒くさいから紗良ちゃんに任せるよ。じゃあ、私もレイアさんと一緒に家へ帰るね、バイバイ。」

 

 泣く女は面倒くさいと言ってしまい、メルもサキュバスには興味なしの態度を取って、洋館を出ていってしまった。

 

(若い女って、こんな所が薄情だよね…。まあ、この体も若いって言えるカテゴリーなんだけど…。)


 まともな男の人格を宿しているため、泣いている女性を放っておけない俺は彼女たちを慰めながら、例のポンコツおじさんを呼んで聞くことにした。


「で、なんでこの現実世界にサキュバスが存在しているの?」

 そう言う風に彼に尋ねると、


「さあ、異世界の住人は仕事の範囲外なので、正確には分かりませんが、映像化された世界から連れて来られたのでは無いでしょうか?」

 彼は異質な彼女たちを見てそう言うと、


「我々も関与していない場所で、悪事に荷担し続ける悪い神と人間が存在しています。まずは、その方を捕らえないと…今後もこんなことばかりおきますよ?」

 彼とその上司も予期せぬトラブルを処理するのに苦戦しているらしい。


「あの姉妹をどうすればいいと思う?自分たちの世界に帰してあげられないかな?」

 姉妹を元の場所に戻してあげられないかを聞くと、


「う~ん、難しいですね。空想の存在に対して生命を与えられたようですし、ベースが絵やアニメーションなら…、その世界でも彼女たちは生きて行けないでしょう。彼女らの栄養源、生身の人間はこの世界にしか存在していませんからね。」


 俺にそう話したあと、彼女たちの対処をしたくないのか、面倒くさくなったのかは分からないが、突然、仕事だと言い訳を告げてきて帰っていった。


(メッチャいい人なんだけど、こう言う対処を避けてる時点で、仕事が出来ない奴だと、自ら明かしているような気もするけど…。)


 彼は呼んだらすぐに来るパシりオーラ満開だし、紗良の魂を陵の体に入れ間違えるし、責任逃れするためにメルへ匿名で時を戻す砂時計を勝手に渡したり、すぐに登録者名簿みたいなのを書き換えて、人の記憶好き勝手に改ざんをするから、あっちもこっちも色々と辻褄が合わない事が起こってる。


(彼がクビにならないのはなんでなんだろ?他者を欺く事が下手くそだから、裏切らないと言う信用性を得ているのかな…。)



 結局、みんなに逃げられたので、サキュバス姉妹が落ち着くまで待っていると、レイアさんが倒した妹の方が目を覚ました。彼女は姉に、


「お姉、人間の女は怖いよ、笑顔で腕や足を逆方向に曲げて来るんだ…。」


 彼女はレイアさんの行った拷問について、姉へと泣きそうになりながら、説明していた。二人で人間の女怖いトークに華を咲かせたあと、待っている俺に対して姉の方が、


「紗良さんはいい人です。蹴りを入れるだけで私を許してくれたんですから、だから、今日からあのメルとか言う女に取り憑いてやるんです!」

 と俺に告げると消えてしまった。


(本人の許可は?)メルは変なサキュバスの姉に取り憑かれそうだ。


「お姉、私はもう一人の女の人に取り憑いて精エネルギーを受け取るよ。」

 妹の方はレイアさんの体に取り憑くと宣言したため、


「ちょっと!説明して!勝手に人の体へ入る理由を説明してよ。」

 そう言って、取り憑く宣言をしたサキュバスの妹に声を掛けたが、


「紗良さま、私たちはあの女たちに取り憑いて、陵の精エネルギーを搾取してやるのです。」

 妹サキュバスはそう言うと消えてしまった。


(あ~あ、メルもレイアさんもサキュバスに冷たく接したりしたから、取り憑かれそうだよ。もう、知~らない。)


 俺は誰もいなくなった洋館を出て普通に家に帰って行った。



 週が明けて学校に行くと、教室がざわついていた。何があったのかを聞いて見ると、メルが大きな胸を揺らして明らかにノーブラで学校へ来ていた。


「あっ、紗良ちゃんだ~。おはようのチュ~。」

 朝からメルに唇を奪われてしまったので、慌てて払い除けると、


「私たち、親友じゃん。仲良くしよ~よ~。」

 メルはサキュバスに取り憑かれてしまい、エロの塊に変貌していた。


 その後、男子を押し倒して行為に至ろうとしたため、先生に連れて行かれそうになると、次は先生を誘惑し始めて、学校中がパニックになった。メルがありとあらゆる男性を誘惑するため、女性の先生だけではどうにもならず、仕方が無いのでメルを抑えて大人しくしてもらった。


「まったく、サキュバスなんかに意識を支配されるなんて…。だらしないよ?メル!」

 そう言って、大人しくさせたメルを叱りつけると、


「紗良ちゃ~ん、私は男が欲しいの、離してよ!」

 ひたすら男を求め続ける彼女は取り抑えても、まったく懲りていない。


「はぁ~、帰るよ、メル。」

 彼女がいると授業も出来ないため、メルを捕まえたまま、その日は帰宅した。


 陵の家に着くと、メルを解放すると…、


「酷いよ!紗良ちゃん!メルは男の人と触れ合いたいから、学校に行ったのになんで、邪魔するの!」

 彼女はずっと、サキュバスに操りたい放題されていた。


「メル、学校は男と触れ合う場では無いよ。そんなに男としたいのなら、家で陵と楽しみなよ。性欲の塊のアイツなら、メルを受け止められるでしょ?」

 Hをするなら、家でしろよと告げると、


「じゃあ、陵くんを元気にしてよ!」と怒られた。


 どういう事なのかを確認するため、家に入って陵の部屋まで行くと、やつれ切った陵がベッドでぐったりとしていた。


「紗良先生、助けて下さい。メルが俺を寝かせてくれないんです。一日何十回も俺の上で腰を振って、搾り取ってくるんです。」

 サキュバスに精エネルギーを奪われた陵は寝たきり状態だ。


(精エネルギーを奪われると、力も出なくなり…ああなるのか。)


 俺は魂を抜く手袋を取って、メルから取り憑いたサキュバスを取り出し、自分の体に取り入れてどの程度の性欲が出るのかを試したら…、サキュバスの方が飛び出してきて、


「紗良の体ってどうなっているの?居心地が悪すぎるし、気持ち悪いよ。」

 サキュバスの方から拒絶された挙げ句、毒を盛られたかのように苦しみ出して、昇天してしまった。


(性欲の無い体に入ると、その処女の毒性で殺られちゃったよ。)


 その後、聞いたのだが、もう一体のサキュバスもレイアさんによって始末されたらしく、この問題は意外な結末で解決に至った。

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