第33話 黒幕の少女が欲しいモノは?

 洋館に入ったはずの陵を探していた俺とメルは妖艶なサキュバスを相手取り、足止めされていた理由を知るために奥の扉を壊して、先へ向かっていた。そして…、一番奥の部屋の扉を開けると、


「うむ、妹の報告どおり、幼女と可愛い子ちゃんが来たな。そこの幼女は要らん、精エキスが溜まっていないからな。そっちの可愛い子ちゃんは残って、わらわに奉仕せよ。」


 少女のサキュバスが、メルは要らなくて、紗良の体の俺には残れと言ってきた。


「メル、お前よりも幼女体型のサキュバスに、ヤリマンは精エキスが枯渇しているから、帰れって言われてるぞ?」


 そう、メルへ告げると、


「反対に紗良ちゃんはなんで処女なの?初めては白馬の王子さまに奪って貰うつもり?それとも、いつもみたいに紗良の中身が男だと言い張るの?」


 彼女に言い返された。


「私の理想の男性は今の紗良の中にいる人格だもん。男らしくて、メルも好きでしょ?私の事?」


 今の紗良が好きでは無いのかを尋ねると、


「ちょっと口がうるさいけど、イイ人だと思いよ?まあ、陵くんに比べると…、カッコ良さが足りないけど…ね。」


 そう告げると、メルは陵を奪う奴はサキュバスだろうが、紗良だろうが、誰も許さないと言って、目の前のアイツを睨み付けた。


(陵のどこがカッコいいんだろ?みんな…なんであんなどうしようもない男が良いんだろうか?)


 みんなしてあの男に夢中の意味が分からないので、少女サキュバスとメルのこの争いには、仕様もなく感じていて呆れていた。だが、メルの付き合いが長い私は、


「降参して、陵を渡した方が身のためだよ?じゃないと…このメルは…。」


 と言って、少女サキュバスに返せと告げた。


「陵もそこの可愛い子ちゃんも真の姿に戻るための獲物なの。精のエキスを集めて、わらわは最強の女王として…この世界を手に入れるのじゃ。」


 でも、少女サキュバスはそれを聞いて、精エキスが豊富な男だから返さないと言い返してきて、紗良の中にある精のエネルギーも頂くと宣言した。


(結局、こう言う奴って、魔王みたいな発想しか出来ないんじゃん…。捕まえて、無力化して三河さんに引き渡そう。)



 そう考えた俺は、少女サキュバスに拳を向けて歯向かう意思を見せたあと、メルよりも早く彼女に近付き、腹に蹴りを加えてブッ飛ばして倒すと、


「紗良ちゃん、ストレスが溜まってるからって…、見た目がいたいけな少女に対して、蹴りを入れるのは良くないよ。」

 と見た目は少女だから、そう言うやり方は良くないと私を責めて来たので、


「メルはもっと酷いことするでしょ?例えば…、顔面を原型が無くなるまでボコボコに殴り付けるとか、そのあと箱に詰めて川に流すとか、するでしょ?」


 そう言って、非人道的な行為をするだろうって告げると、


「紗良ちゃん…、メルはそんなことしないよ!縛って生きたまま、ドラム缶に入れて海に沈めるだけだよ~。」


 どこかのドラマにある犯罪者みたいな事を言っていた。


「うう、鬼じゃ、悪魔じゃ、わらわをなんだと思っておるのじゃ!」


 彼女は腹を押さえながら、そう呟くと、


「悪魔はお前だろうが!サキュバスって、そんな生き物じゃねえのか?」

 口を荒げて彼女に告げると、


「わらわは力を取り戻したいだけなのじゃ!女王なんてやらないのじゃ!ちょっと、気持ちが大きくなって、ホラを吹いただけなのに…、人間は本当に酷い奴らなのじゃ!」


 そう言って、少女は泣き出してしまい、収拾が付かなくなってしまった。


「紗良ちゃん…、女の子を蹴って、泣かして、本当に最低だよ。」

 ドラム缶に詰めて海に沈めると発言したメルに叱られたので、


「いや、メルが海に沈めるって言ったから、怖くなって泣いたんでしょ?私は肉体に攻撃をして大人しくさせただけで、精神的に追い詰めたのは、メルだよね?」

 俺はメルの方が酷いと話して、泣きわめく少女の前で口ゲンカしていると、


「あらあら、そっちも終えたのね。この姉妹をどうしてやろうかしら?」


 レイアさんが最初にいたサキュバスを倒したらしく、その巨乳サキュバスだったはずの少女の足を持って引きずりながら、この部屋にやって来た。


「レイアさん、その子…、白目向いて気絶しているけど、何をしたんですか?」

 顔や腕と足など、見える所以外は何もしていないのを確認して聞くと、


「このモンスターにも、骨があったのね。結構、良い音がなったし…、骨が何本か折れたんじゃ無いのかしら?でもね、気絶したら変化が解けてこの通り、少女の姿になったのよ。まあ、私に対して失礼で醜い姿を見せたのだから、こうなっても仕方無いわよ…。」


 陵のレイアは陵の彼女メルよりも怖い女性だった。


星蘭セイラン!うえ~ん!妹が、妹が!」

 妹の変わり果てた姿を見た姉のサキュバスが泣きながら、気絶している妹サキュバスの側に行き、気絶した彼女を擦っても動かない姿を見て、さらに泣いてしまった。


(泣くなら、最初から、悪役みたいな態度を取るなよ…。)


 クソ弱い、姉妹サキュバスを見てそう感じた俺は、レイアさんに回復魔法を使って治して上げてと伝えると、彼女はとても嫌そうな顔をしつつも、「紗良ちゃんが言うのなら、仕様がないわ」とぼやいて、彼女たちを回復させ始めた。


 泣き続ける姉のサキュバスは、陵なら奥の部屋に眠っていると白状したため、レイアさんがそこの部屋に行き、眠っている陵を軽々と担いだ。その後、車で来たから先に帰ると俺に告げたあと、私たちにそのサキュバス姉妹の処理はお任せすると言い残し、洋館を出ていった。


(レイアさんは陵以外には、基本、興味なしだよね。あんなゲス野郎のどこに惹かれて結婚するんだろう…。)


 陵の女性を引き寄せる能力は天賦の才なんだろうか…。今回は遂にサキュバスを呼び寄せてしまった。


(しかも、結構なロリ路線だし。この子たちは力を取り戻すため、陵を利用していたみたいだけど…。)


「ねえ、メル。この子たちをどうしようかな?」


 若いサキュバス姉妹の処遇を彼女に尋ねていた。


(俺は陵に関して言うと無関係者。陵の女のメルに聞いてみよう。)


 俺の言葉を聞いた彼女はとても面倒くさいそうな顔をしていたので、ああ、陵の事でも無いし、心霊やいつものオカルトには関係の無いことだから、興味無いんだと、顔を見て、一発で分かった。

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