第27話 正しい行いだけが良いとは限らない。

 世の中、腐った大人はたくさん存在するが、神具を使い自分勝手な事をしている訳じゃない人間を裁くのは、気が進まない。


(使用者以外は記憶が置き換わるから、学校の校内問題が少なくなり、男女交際をする人間も増えて、みんなが幸せを感じている…。でも…。)


「ねえ、あなたも男子高校生になりたかったんでしょ?なら、何も知らないフリをするのも…、みんなが幸せになるとは思わない?」

 

 彼女は俺にこのまま黙っていろと言ってきた。それを聞いた俺の答えは…、


「いや、見過ごさないよ。俺は紗良の中で生まれた立派な人格者。紗良がこう言う男性がいたら…と願った理想の人間なんだよ、その俺が現実改変する行動を揉み消すなんて…、するわけない!」

 

 そう告げて、神具を神様に返すように要求すると、


「残念ね…、あなたには死んで貰いましょう…。」

 

 彼女はハルバートみたいな武器を空間から取り出すと、俺に向かって振りかざしてきたので慌てて部屋を出ようとしたが、出口がなくて逃げられないようにされてしまった。そして、空間から同じ武器を持った異空間にいた男が現れて、二人がかりで襲いかかってきた。


(武器持ち二人が相手で、二人とも学校の教師とは思えない腕力を持っている。それに息ピッタリの行動…、やはり、あの男は姫佳の影。)


「私かあなたのどちらかが死ぬまで、この部屋からは出れないよ?」

 

 姫佳がそう言うと、容赦なく斬りかかってくるし、タイミングを少しずらして男の方が動くため、まったく反撃をさせて貰えない…。


「ハルバートって斧でも槍でもあるんだ。男でも女でもない感じに似ていると思わないか?」

 男の方が言ってくるので、


「避けるので精一杯の俺に話し掛けるな!落とし穴にはめた恨みを忘れてねえからな!」

 そう言い返して、何とか、反撃の機会を伺おうとした。


「まあ、女の子なのに男っぽい言い方ね。可愛く無いけど…、私は好きよ?」

 姫佳は苛烈な攻撃を加えてきながら、好きだと言ってきた。


 避け続けてはいるが、反撃しないと勝機はない。武器になりそうな物もなくて、困り果てていると、


 教室の空間をハンマーでぶち壊したメルが現れて、


「お前か!ウチの部長を殺った奴は!」


 男の方をかなり重そうなハンマー高速で振りかざし、殴り飛ばして倒してしまった。


(いや、メル…部長は死んで無いよ?)


「メル!遅いよ。こっちは殺される所だったんだよ?」

 彼女の登場の遅さに怒ると、


「紗良ちゃん、あの雌豹も犯人なんだね、これ使う?」

 当たるとメチャクチャ痛そうなハンマーを差し出したので、


「ありがとう、でも、その武器は要らないよ。加減できないし、あの女を捕らえずに殺してしまうから…。」


 武器を持つと手加減出来ないと話したあと、姫佳の腹に蹴りを入れて一瞬で倒した。


(彼女を倒したら、何かが変わる訳でもない。ただ、自然の摂理に逆らう行為を見逃す訳にもいかない…。)


 本当にこれで良かったのかは分からないけど、正しさは人それぞれだと思うよ。だから…、彼女のこれ以上の蛮行は止める事にした。



 俺は三河さんを呼ぶと、彼は神具を取り出して持って帰ってしまったが、起きた事は当然、戻せないため、オカルト研究部のメンバーは、女子生徒だけのメンバーに変わった。その影響でかなりの男子生徒の入部が殺到して、何事も無かったかのように活動を続けている。部員が増えて、俺は人数合わせの幽霊部員を続ける必要も無くなり、メルは陵の方が大事と言ってしまい、共に三年生だと言う理由で、部活動を引退してしまった。


「紗良先輩!僕も幽霊部員になりました、先輩たちの仲間にして下さい。」


 お嬢様コスプレをしていた男の娘はガチの女性になってしまい、ただの女子力高めの元男子生徒の女子高校生として存在している。元々、紗良とオカルト話に興味があるらしく、俺やメルの仲間になりたいと懇願してきたため、


「う~ん、和希かずきちゃん。私のお兄ちゃんに手を出さないのなら、仲間に入れてあげるよ。」


 メルはそう話したが、


(違うぞ、メル。逆だ、陵がこの子に手を出すんだよ。ゲスだから…。)


「大丈夫です!僕は紗良先輩、一筋ですから…。」

 彼女は目を輝かせながら、ベッタリと引っ付いてきた。


 その後、和希をレイアさんと陵に紹介してレイアさんは可愛いと撫でて、


「和希だね、よろしく!俺はメルの兄の陵だ。君も兄と呼んで構わないぞ!」

 爽やかに挨拶をしていて、裏のゲスさを隠していた。


「陵兄さま…、ですね。よろしくお願いいたします。」

 彼女はハキハキしていて、爽やかな陵に好感を持ったみたいだった。


(嫌な予感しかしないな…。大丈夫か?)


 

 その心配は予想通り起こり、数日経ったある日…和希が、


「先輩~。昨日はとても気持ち良かったです。また、して下さいね?」


(昨日?俺は君に会ってもいないし、何もしていないが?)


「昨日は和希に会っていないぞ?人違いじゃないのか?」

 彼女に昨日は会っていないと話すと、


「えっ、でも、三時間だけ、陵兄さまの体と入れ替わっているから、Hしようって誘って来ましたよね?まるで本物の男性みたいにしてくれて、とても興奮しました。また、お願いします。」

 彼女はそれだけ告げて、いつものように甘えてきた。


(ほら、やっぱり…ゲス野郎だよ…。紗良のフリをして和希を抱いてしまったよ…。他人のフリをしたのか、迷惑な奴を殺してしまおう。)


「ねえ、和希。あれは陵だよ?私は何もしていないし、騙されたんだよ。」

 彼女に陵が嘘を付いて襲った事を話すと、


「えっ!じゃあ!陵兄さま本人だったの…。」

 彼女は騙された事にショックを受けているようだったが、


「紗良先輩、私…、陵兄さまの事が好きになりました。だから、先輩とはもう、お付き合い出来ません!」

 そう言って、彼女は走り去って行ってしまった。


(なんで、陵に寝取られて、紗良オレがフラれたみたいになってんの?)



 そのあと当然、和希は陵にベタベタ引っ付いて甘え出したため、メルがキレた。それをレイアさんがなだめるように止めていたため、陵がやらかした事を暴露すると無言でキレた二人は、陵を気絶させたあと、地面に埋めて帰ってしまった。


(陵が何をしても許される時代は終わったんだね…。)

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