第24話 失踪して帰って来ると…、

 心配しつつも音楽室にも変化はないし、他に手がかりが無いため、メルと二人で帰っていると、


「あっ、お兄ちゃん!迎えに来てくれたの!」陵がやって来て、


「我が妹よ。俺様が迎えに来てやったぜ!さあ、家に帰ろう。」


 また、変な人格を植え付けられた陵はメルを抱き締めると、そのまま堂々とお尻を触り出した。


(彼の基本のベースは変わっていないよ?喋り方が変わっただけだよ。)


「お兄ちゃんって、私のお尻が好きだよね。もし、兄妹じゃ無かったら…犯罪だよね。」

 そう言って、嬉しそうに甘えるメルに、


「ああ!兄と妹の大事なスキンシップだ。触る事で俺の◯◯◯は元気なる!このあとの本番に影響するからな!」


 卑猥な発言を爽やかに言っているゲス野郎に、呆れて物が言えなくなりそうなので、


「胸でもお尻でも触るのは何でも良いけど、家でやりなよ。」

 公共の場での行動と発言を慎めと言った俺に、


「ハッハッハ、紗良ちゃんは本当に面白いね!外で準備運動をやるから、家での本番に繋がるんだよ。やる時はちゃんと体を動かして、ウォームアップをしないとダメだぞ?」


 ゲス野郎は女性のお尻を触る事を準備運動と言い、これから妹と家で本番をやる事を堂々と宣言していた。


(新しい陵は爽やかゲス野郎だな。お前の年上の妻はどうするんだ?)


「お兄ちゃん!早く帰ろうよ!本番はレイア義姉さんには負けないんだから!」


 メルも高々と浮気宣言したあと、呆れる俺に別れを告げて、イチャ付く陵と二人で帰って行った。


(陵がまともになる日はもう…来ないな。)



 バカップルよりも気になるのは行方不明になった圭太と龍輝だ。三日との共通点は音楽室と二人組って事だ。その組み合わせと場所に何かがあるのかもしれないな…。


(心配だし…明日、メルを連れて音楽室にもう一度行ってみるか…。)



 次の日になり、学校に行く途中に、


「紗良先輩!おはようございます!」


 と後ろから聞いたことの無い女性の声がして振り返ると、龍輝くんに似ている女子高校生が声を掛けてきた。


(この子、龍輝くんに似ているけど…誰?妹か姉?)


「おはよう、私の事を知ってるの?」

 初対面のため、会ったことあるかを聞くと、


「先輩~、昨日も会ったのに私の事を忘れないで下さいよ~。ミステリー研究部で一年の龍輝ですよ~。」

 

 彼女は自分の事を龍輝と言ってきた。


(ん?昨日は男子高校生だったよね??)


「龍輝って男の子じゃないの?」素直に聞き返すと、


「むむ!確かに男の子っぽい名前ですけど、私は女子ですよ!気にしているのに、堂々と言っちゃうなんて…、私、傷付きました…。」

 

 彼女は男の子っぽい名前を指摘すると、傷付いたと言ってしまい、怒り始めてしまった。


「あれ?紗良ちゃんに龍くん、何を揉めてるの?」

 怒っている彼女と俺の事を見つけた、メルがそこにやって来て、


「メル先輩も、龍くんって言わないで!私は女子なんだから!」

 龍くん呼ばわりしたメルにも、彼女は怒り出してしまった。


「ごめん、ごめん、つい…。あっ、そう言えば、昨日はどこに言ってたの!圭ちゃんと一緒に部活中なのに連絡せず、帰らないでよ~。メルたち…探し回って、心配したんだよ?」


 メルは彼が女性になった事より、いなくなった事を叱り始めた。


(メル…、問題はそこじゃない。龍輝が女の子になった事の方が問題だよ?)


 俺はメルを捕まえて、小声で龍輝くんが女子になっているのに気付かないのかを尋ねると、


「紗良ちゃん!みんながあなたみたいに自分は男って言い張る訳じゃあ無いんだよ。龍くんは男の子っぽい名前がトラウマなんだから、そんな事を真顔で言っちゃう所が、紗良ちゃんの悪い所だよ?」


 龍輝は男だった事を話すと、メルに叱られてしまった。


(また、俺以外の記憶が置き換わっている…。すると、これは、神の道具を使った奴の仕業なのか?)


 その後、龍輝に謝罪して、昨日に何があったかを聞くと、圭太と龍輝は音楽室に行ったらしいが、そこで気を失い、気付いたら保健室で圭太と一緒にいたらしい…。部員に心配を掛けた事をメルは叱り付けて、他の部活メンバーへの謝罪を要求していた。俺以外、全員の記憶が置き換わったので、それが真実では無い気もするが、取りあえず…何かが起こって、こうなった事は確実だ。


(二人の男子高校生が女子になった?しかも、その二人は気を失い、保健室に運ばれていた?そんなことがあり得るのかな?)


 俺は首を傾げながらも、学校に行くと眼鏡女子二年の栗原さんがメルを尋ねて来て、何やら話をしている。


(あの子も真面目な感じなのに、部活の部長と付き合っているんだよね…。もしかして…、あの子も元は男の子だったのかな?聞いてみよう。)


「ちょっといい?栗原さんって名前って何て言うの?」

 彼女に名前を聞いてみると、


蒼惟あおいですけど、それが何か?」彼女は答えてくれたが、


(ムズいな、ジェンダーレスの名前だし、元男子高校生かの判別が使ねえよ…。)


「ありがとう、栗原さん。聞いたこと無かったし、仲良くしようと思ったから聞いてみたの…、ゴメンね。」

 そう彼女に告げて、名前の事をそれ以上、突っ込むのを止めた。


 栗原さんが立ち去ったあと、メルが、


「蒼惟は紗良ちゃんが嫌いだからね、部長は蒼惟と仲良くなるまでは紗良ちゃんの事がかなり好きだったし、今も幽霊部員の紗良ちゃんが部室に来ると、部長が嬉しそうに迎え入れるから、尚更、気に食わないんだよ。」

 

 栗原さんが嫉妬心で紗良の事を嫌っている事を聞かされた。


「ミステリー研究部って女性比率が高いのはなんで?」


 普通はあのオタク部長の元では恐らく…、普通の女子たちは気味が悪いし男子しか集まらないだろうって聞くと、

 

「そう言って、メルが普通じゃないみたいな言い方をするんだね。確かに、メルが一年で入部した時は男子しかいなかったよ?だから、一人で寂しそうな紗良ちゃんを誘ったんじゃん…、本当に覚えてないとか最低だよ~。」

 

 今は親友のメルと紗良だが、一年の時はそうでも無かったらしい…。

 

 その後、詳しく聞いていると、三年になって、学校全体の男女比率が逆転して女子が多い学校に変化したそうだ。メルと紗良が仲良くなったのも、一年の時はクラス全体の女子生徒が少なくて、自然と女子同士で話すようになったらしい…。

 

(あれ?でも、今の俺たちのクラスの女子比率、わりと高くないか?)

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る