第20話 スタート地点で仲間割れ

 レイアさんが再び、陵の前に現れたのだが、


「レイアさんは何故、こう言う登場をするんですか?」

 ヒーラーのコスプレが似合い過ぎる彼女に尋ねると、


「陵さま、すっかり元気になられましたね。さあ、聖剣を今こそ手に入れて、ドラゴンを共に倒しましょう!」

 ゲームのキャラになりきっている彼女には話が通じなかった。


「さっきから、聖剣を探しているのだ。」

 陵はとても嬉しそうにレイアさんの胸を触りながら話している。


「今度の陵さまはお盛んな方ですね。しかし、私の胸の中には聖剣はありませんよ?」

 彼女は嫌がりもせずに冷静な態度をしているが、


「いや、これほどに大きなモノだ。隅々まで調べる必要がある。」

 エロ勇者は納得が行くまで、レイアさんの胸の中を調べるらしい。


「この、淫乱女め、私の陵くんを惑わすつもりだな。はっ!さてはお前が、敵のドラゴンだな!上手く人間に化けて、陵くんを陥れるつもりか!」

 メルが彼女に嫉妬してしまい、仲間割れを起こし始めた。


「くだらない争いをしていないで、さっさとその聖剣とやらを探しに行こうよ。きっと、それがこの世界を作り出した、神具だよ。」

 聖剣の力がこの世界を作り出したと言ったのだが、


「メルがヒロインなの!胸が大きいからって、ヒロイン面しないでよ!」

 レイアさんと揉め出してしまい、話が進まなくなってしまった。


「ヒロインはあなたでも、主人公は陵さまですよ?次にどこに行くかを決めるのは、陵さまが決めるのよ。」

 メルに決定権は無いと言って、話を無視をし始めた。


 陵は彼女の胸を触るのに夢中だし、メルは嫉妬してずっと怒っている。レイアさんは陵のヤりたいようにさせれば良いと言って動かない。

 

取りあえず、陵が原因だと分かったので、

「陵、もしかしたら聖剣は私の中にあるかも知れないよ?」

 

 メルより少し大きな胸を指して言ってみると、


「紗良先生の中にある…、それは調べて見ないとダメだな。」

 陵がイヤらしい手付きで手を動かしながら近付いて来たので、


「ただ触りたいだけじゃねぇか!」

 ムカついたので、かかと落としを食らわせて気絶させた。


「終わりましたね。じゃあ、先に進みますか。」

 レイアさんは気絶した陵をヒモで縛ったあと、


「メルちゃん、なんでこんなに陵は劣化したの?もう一回、記憶を飛ばして、紗良ちゃんぐらいのまともな大人にしてくれないかしら?」

 彼女は笑って胸を揉ませていたが、幼稚な行動に呆れていたらしい…。


「う~ん、前と一緒でお尻を触らせていたら、かなり喜んでくれて、そこまでは順調だったんだけど…、やっぱ、紗良ちゃんがしゃしゃり出るから、狂ったんだよ。変態の陵くんが誕生したんだよ。」

 ほぼ、メルがやった変態調教なのに、俺のせいにしてきた。


「いや、どう考えてもメルが悪いだろ。レイアさんが最初から居たら、こんなゲスい行動はしないと思うよ。」

 陵にほとんど関わっていたのはメルだと主張すると、


「紗良ちゃんは陵くんの分身でしょ!陵くんが変態って事は紗良ちゃんも変態って事だよ?やっぱり、紗良ちゃんが悪いよ!」

 メルはどうしても俺のせいにしたいらしい。



 押し問答を続けていたら、目的を完全に忘れてしまい、


「貴様ら、なんで私を倒しに来ないのだ!」

 物語をまったく進めない、俺たちにドラゴンが迎えに来てしまった。


「あのさ~、メルたち、今は真剣な話し合いをしてるの!ドラゴンだかなんだか知らないけど、邪魔!紗良ちゃんさ~、邪魔なドラゴンを倒してよ!」


 メルが人に陵への責任を押し付けてなお、ドラゴンを処理しろと命令してきたので、


「メルが倒しなよ、魔法使いなんだろ?魔法でドカーンってやれば?」

 と言い返し、

 

「お二人とも、冷静になりましょうよ。」レイアさんが言うと、


「うるさいな~、回復役で巨乳だからって、何も出来ないくせに、偉そうにしないでよ!」

 メルが次はレイアさんに噛み付いた。


「メルさん、前から言おうと思ったんですが、自分勝手過ぎませんか?あなたが一番の陵さんの教育係なんでしょ?そもそも、電車で痴漢をさせて発散させるなんて方法自体が間違った手法だと思いませんか?」


 レイアさんまで、女子の口ゲンカに加わってきた。


「お前ら、まとめて灰にしてやる。」


 ドラゴンが火炎ブレスを吐いてきたため、レイアさんが持っていた杖で陵の近くで結界を張って防いでいた。俺は邪魔された事に腹を立ててドラゴンの足元に滑り込み、足払いをすると、倒されたドラゴンにメルが魔法使いの杖でドラゴンの顔面を殴り付けて、圧倒的なパワーで地面にドラゴンの顔がめり込んでしまい、奴は動かなくなった。


「魔法使いが腕力で倒すなよ。」メルのエセ魔法使いぶりに呆れていた。


「紗良ちゃんこそ、剣も使わずに足払いなんて…、戦士じゃ無いじゃん。」

 勝手に俺を戦士扱いしているメルに言い返された。


 また、険悪なムードになり、話し合いにもならなくなった。


「フハハハ、スタート地点で仲間割れとは、醜い人間どもだな。」

 変な笑い声と共にダサいマントを羽織ったおっさんが歩いてきた。


「おじさん、邪魔すると、このドラゴンみたいに地面に埋めちゃうよ?」

 メルはおっさんに文句を言うと、


「この聖剣を持つ私に勝てる者など存在せぬ、黒焦げになってしまえ。」

 おっさんが聖剣を掲げると、雷雲が発生して大量の雷が落ちてきた。


「うわ!」俺は雷が落ちてきたので逃げ回っていると、レイアさんは難なく炎同様に、雷が当たるのを防いでいる。メルは杖を振り回して雷を受け流している。


「ほれほれ、逃げ回って、醜態を晒してしまえ。」


 武器を持たないため、反撃手段の無いので逃げ回っていたが、まっすぐに陵のいる方へ向かっていき、陵を投げて雷の巻き添えにしてやろうと縛っていたロープを掴んで、陵をおっさんに向けて投げ飛ばした。彼はおっさんに蹴り返されて、近くの地面に倒れてしまった。


「フハハハ、勇者を犠牲にするとはバカな行動だな。」


 囮を投げた俺はすでにおっさんの背後に回り込んでいて、メルも奴の前に迫っていて二人で同時におっさんへ攻撃を加えた。でも、


(手応えが無い…。)


 二人で奴を殴ったが、その姿は聖剣で作り出した幻影だった。隙ができた俺たちは雷撃を受けてしまい、俺はギリギリ耐えたが、メルはまともに浴びてしまい、倒れて気絶してしまった。

 

 仲間割れした伝説の勇者パーティはボス的なおっさんを前に、勇者とヒロインが気絶する大波乱になってしまった…。

 

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