第19話 メルのライバルはやはり…

 紗良先生、今の俺は陵にそう呼ばれている。所謂、教育係みたいなモノだ。ゲスい行為が好きな陵を止める役割を担っているのだが…、


「紗良先生、メル以外の女の人の胸を揉んではいけないのは何故ですか?」

 無垢な陵くんに聞かれてしまったので、


「陵、基本的に公共の場で男性が女性にそのような行いはしてはいけないし、犯罪行為なのは、分かりますよね?」


 そもそものワイセツ罪に当たる事を話すと、


「はい!でも、僕の部屋なら、やっても良いとお聞きしたので、お母さんの胸を揉ませて頂きました。紗良先生も僕の部屋に来て揉ませて頂けませんか?」


 電車で痴漢を止めたと思えば、次は家に連れ込んで女性の胸を揉む事が趣味になったようだ。


「陵くん、先生は教える身の人間ですが、そう言う、教えはしていないので、以後は発言を慎むように…、もし、破れば、分かっていますね…。」


 JKの体で何故、こんなゲスい大学生の指導をしないとダメなのか…、かつて陵だった俺は自分の生活指導に悩んでいた。


「はい、お母さんにも怒られました。やっぱりメルは優しいです。でも…、僕は、もっと大きなモノを触りたいんです!」


 ゲスい陵は大きな夢を掴みたい、みたいな言い方をしてきた。



 メルに逆レイプされて精神的に幼くなり、困った発言を繰り返す、陵に困り果てている俺たちの前にメルが戻ってきて、


「陵くん、ドラゴンが、ドラゴンが出たらしいよ!」

 ドラゴン?あの空想の生き物?


「メル、本当なら、伝説の勇者の僕が退治しないとダメだね!」

 陵は異常にテンションが上がってしまい、メルと盛り上がり出した。


(おい、陵にそんな中二病の属性は無かったぞ、メルはアイツを更正させる気があるのかな?どんどんヤバい奴になって来てるぞ。)


「陵くんが勇者なら、メルは勇者の恋人の魔法使いだよ。ドラゴンを倒して、世界を平和にしたあと、永遠の愛を誓って結ばれるんだ~。」


 ある意味、噛み合う二人がドラゴン討伐にはしゃぎ出したので、


「いつものアレでしょ?神具の流出の話だよ。」

 俺はモンスター系の話は世界を作った奴がいると話すと、


「紗良ちゃんは色気の無い荒くれの女戦士ね。荒れていた所を陵くんに改心させられたダメ戦士。」

 メルが変な設定を紗良オレに与えてきた。


「ハイハイ、なんでもいいから、心配だし付いていくよ。」

 俺はメルと陵だけに任せるとろくな事にならないと思い、同行する事にした。


(まるで、問題児カップルの保護者だよ。)



 いつものように、空間の狭間に世界が作られているようだ。特別な人間しか入れない空間らしいため、鍵みたいな物をメルは持っているみたいだ。


「ねえ、なんで女子の私が重いリュックサックを背負わないといけないの?この役目はいつも陵がやってるヤツだよね。」


 陵の時にいつも背負わされていたリュックサックを紗良になっても持たされる理不尽な扱いに抗議すると、


「伝説の勇者さまは主人公なの!腕力しか取り柄のない、女戦士の紗良ちゃんが荷物係なのは当たり前だよ、ね~、勇者さま。」


 魔法使いっぽいコスプレをしているメルが勇者っぽい格好をする陵にベタベタ引っ付いていた。


「それにしても、紗良ちゃん、真面目にしてよ!なんでノースリーブにハーフパンツにスニーカーなの?女戦士は金属性のビキニに皮の腰巻きにブーツが基本だよね?もっと戦士っぽくしてよ!」

 勇者一行のコスプレをしない俺は叱られた。


(アホか、動き辛いだろ。ただでさえ、スポブラしてピッタリサイズのノースリーブ着ないと胸が揺れるのに、金属ビキニオンリーは却下だよ!)


イチャつくバカップルの後ろを歩いていたら…背後から、


「誰か、助けて下さい!」(あれ?この声は…。)


 後ろを振り向くと例のヒーラーコスプレをした、ブロンド髪で外国人美女のレイアさんが、ミドリ色の金棒を持ったモンスターたちに追われていた。


(ありきたりな生物モンスターだな。)


「魔物が、この伝説の勇者、陵が成敗してくれる!覚悟!」

 陵は金属の剣を持って、モンスターに飛び掛かって行ったが、金棒で殴られて一瞬でヤられてしまった。


(伝説の勇者、弱いね。仕方ない…。)


 俺は陵が持っていた剣を拾って、モンスターたちを斬り込んで瞬殺した。紗良の体は別世界の人間のため、何故か速く動けるため、メチャクチャ強い。


「ああ、勇者さま、すぐに回復を!」

 レイアさんが血まみれの陵を膝枕すると、陵の顔がニヤけて幸せそうな顔をしていた。


(おっ、生きてる。しかも、膝枕にメチャクチャ喜んでる。)


そのあと、膝枕介抱をされているバカを放置して、


「レイアさんって何者なんですか?」彼女に尋ねると、


「紗良ちゃん、メルちゃん、久しぶりね。勝手に世界を壊して時間を巻き戻しちゃうから、私は大変だったんだよ?勇とルナと一緒に何もない部屋へ閉じ込められちゃって…。やっとあの子たちのいる世界線がある場合に送り届けたんだから…。」

 

 レイアさんはクズ陵が時の砂時計を壊した影響を受けて子供たちとさ迷い、みんなが平和に生きている世界に勇とルナを送り届けてから、再び、俺たちのいる場所に戻ってきたらしい。


「陵のせいで迷惑を掛けてすみません。でも、なんで戻って来るんですか?それに…、世界の間を移動出来るのはなんで?」

 彼女に理由を尋ねると、


「レイアさんはメルと同業者。メルが依頼を受けてる人とは違う人に雇われた同業者。」

 何故か、メルが答え出した。(同業者?)


「それに紗良ちゃんも、もう同業者みたいなモノじゃない。他人の体を使って色々と動いている。陵の記憶を保持したまま、世界を移動している時点で私たちと同類の人間…。」

 レイアさんが俺の存在が同類だと話してくれた。


「じゃあ…、メルやレイアさんの中身は誰なの?」

 紗良の中身が陵。他の人の中身も違うって事じゃ無いのかと尋ねると、


「メルはメルだよ。」こちらは正体を明かす気はないらしい。


「取りあえず、日本人女性だと言っておこうかしら…。」

 レイアさんも深く語るつもりはないらしいが、この二人の共通点は一つだけある。それは…、


「勇者さま、私を旅のお供に加えて下さい。私の回復魔法は必ずや勇者さまのお役に立てますから!」

 そう言って、レイアさんは陵の顔を自慢の胸で挟んで喜ばせていた。


(それは回復魔法では無いけど、陵が元気になって来ているぞ。)


 この二人の共通点、何故か知らないけど…陵が好きなのだ。

 

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