第17話 陵の更正プログラム
陵とのHに夢中のメルの代わりに神様の神具探しを手伝った俺は黄泉の国のコンビに遭遇した。どうやらポンコツの方は三河さんというらしい。死神様は現世ではチャラい格好をして三つ頭の犬を散歩させる少しお茶目な人だったが、
チャラ神様はケルベロスにクズ男を差し出すと、三つの頭の犬たちが、憑依クズ男の喉を噛みつき声を奪うと、手足を噛み千切り、食べ始めた。
(おい、俺には見えてんだぞ、捕食の惨殺シーンを見せるなよ。)
俺は容赦ない地獄行きの人間の裁き方に引いていると、
「あんたみたいな特殊な人間たちへの見せしめだ。神具を拾っただけなら許したが、その人間は悪用して多くの人間の心を壊したからな。」
地獄の神様は悪さをする奴に容赦が無いみたいだ。
しばらくすると、ケルベロスの食事が終わったため、反らしていた目を開けると魂には血も骨も無いらしく、肉部分はキレイに食べ尽くしていた。
「ウチの犬も腹いっぱいになったし、神具回収して、近くにあるはずの遺体は捨ててくるよ。世話になったし、またね、猪狩ちゃん。」
チャラ神様はケルベロスを連れてどこかへ歩いて行った。
俺は終わったので、メルに捕まえて終わった事を電話すると、
「えっ、もう終わったの?こっちも早かったよ。陵くんは初めてだったからすぐに疲れちゃったよ。」
そう言って陵が童貞を無事に卒業した報告を受けた。
「ねぇ、俺の事を本物の紗良だと思ってるでしょ?」
元陵だった俺に陵との性的な事を報告し続けるメルに確認すると、
「だって、紗良ちゃんの体とはHが出来ないもん。だから、一緒に陵くんを更正させる、私の大切な親友として愛してるんだよ?」
紗良の体の俺は親友らしい…。
「もういいよ、それで…。俺はメルとそう言う関係になりたい訳じゃないし、いずれは紗良さんに体を返さないといけない。」
今は陵が再び、間違いを犯さないために居ているだけだと話すと、
「ありがとう、紗良ちゃん。早速、明日から陵くんがメル以外に痴漢しないように更正させて行くし、今日から陵くんの部屋に住むよ。」
そう言うと、実家から荷物を持って来ると告げて電話が切れた。
俺は紗良として生活してちゃんと高校にも通っているのだが、同じ高校に在籍しているメルは学校に来たり、来なかったりしている。しかも、学校に居てもいっつも、陵の話ばかりしている。
(彼氏の陵がいつの時点で幼馴染みとなったのか、紗良目線だと、メルは陵の話しかしない女だったんだな…。)
ある日、陵とメルの三人で出掛ける事になった。
「紗良先生、こんにちは~。」久々に会う陵には首輪を身に付けていた。
(紗良先生?犬?メルに飼われてるのかな?)
憐れな陵の姿を見て「こんにちは」と挨拶を返すと
「メル、ちゃんと先生に挨拶したよ!」
元気いっぱいに挨拶をした陵はメルに引っ付いていた。
(陵が幼児化してるぞ、何をしたんだ…。)
陵の変貌ぶりに驚いたが、メル以外に襲いかかられても困るため放置した。
「そう言えば、今日は怪物?心霊?」
メルに付いてきたが、目的を聞いていなかった。
「最近ね~、動画を見て面白がった、背が高めの若い女性がそこのスポットに行くと必ず行方不明になるんだって~。」
毎回の事だが、メルは死の匂いしかしない案件を見つけてくる。
「随分とピンポイントのターゲットで狙われるよね。なんでだろ?」
俺はそれを聞いたが、ふと、その条件に思い当たる節があり、
「そうそう、紗良ちゃんみたいなスタイル抜群の女子がいなくなっているみたいだよ?日本人には少ない体型だし、被害者は少なくて済むんだけど…ね。」
メルはスマホで、行方不明者の女性の年齢とプロフィールを見せてきた。
(怖い時代だよ…。調べると、身長や体型まで分かるんだから…。)
「なんで、そんなピンポイントなんだろ?スタイル抜群の女にフラれて逆恨みしているから拉致した?背の高い女性が好きなフェチ?」
「まあ、紗良ちゃんを連れ去ろうとする奴に聞けば分かるかも。」
メルがなぜ、俺を連れて来たのかが分かった。
(はぁ~、また囮ですか?女って大変だな。)
俺たちは動画にあった場所の近くまで行くと、ただの静かな田舎の集落だった。見た感じ、過疎化は進んでいるようだけど…、
住人を見ているとやはり、背の高い女性は存在していない。背が高いと女性は逆にコンプレックスを抱くらしいが、陵の意識しか無い俺はどっちでもいい感じのスタンスだったため、堂々と歩いていると、
「紗良ちゃんは拐われる気が満々だよね~。警戒しなよ~。」
メルは自分は条件に当てはまらないため、余裕の表情だった。
行方不明者の女性が出ている場所とやらまで来ると、霧が出ていて、いかにも失踪して、人を拐いやすい場所だと思った。危ないのでメルたちとはぐれないようにしていたのだが、
「彼氏付きか、別にエエわ。」前から、初老の男性が現れた。
「先生~、メルは?」陵に尋ねられてメルがいない事に気が付いた。
(本命に出くわしたのになんで、お前がはぐれるんだよ。)
「あんたが、行方不明の女性たちを拐う、人さらい?」
俺がソイツに尋ねると、
「あんたも背の高いのが嫌なんやろ?ワシに任せとけ。」
なんか、聞いてたのと違うんだけど…。
「ちょっと!あなたは何者なの?」再び、尋ねると、
「おっと!それはお互い聞かん約束やで、ほな行こか~。」
変なお爺さんは俺に付いてこいと行ってきたので、何もしなさそうなので、黙って付いていく事にした。
メルがいなくなり不安になった陵が突然、後ろから抱き付いてきて、
「先生~、柔らかいよ~。」と言いながら、陵が胸を揉んで来たので、
「殺すぞ、メル以外の体には触るなって教わらなかったのか?」
陵を投げ飛ばすと、
「だって、メルがいないんだもん。僕は胸を揉まないと不安なんだ。」
陵には新たに変な性癖が身に付いていた。
陵の更正プログラムには早くも不備が起こっていて、教育係のメルの不手際に呆れながら、陵と二人で、男性の後ろを歩いていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます